棚に隠れた隙間の窓から、ぽつぽつと雨が降り出してきた。
ここの所、どうにも曇りの日が多かったのはこの為だったのだろうか?
この埃っぽいデータ倉庫には……雨の音さえ、大きく聞こえる。
【昔話】
「おー。あったあった。これだ」
先ほど、樹書倉庫を借りる――と言って入って行った弥牙さんの声が、雨の音を遮った。
なんだかんだ言っても樹書倉庫はそれなりに広い。こんなに早くお目当てのものを見つけるなんて、さすが……年の功というか、なんというか――
「おぉ、松笆−マツハ−ありがとう。見つかった」
倉庫からひょこり顔を出した弥牙さんに、思わず苦笑いをしてしまう。
「それは良かった。急ぎだったんですか?」
「いや、そこまで急がん。これは仕事とは別の件でね」
敢えて、深くは聞かずにおこうと決めて、オレは小さく――そうだったんですか、と頷いた。
「松笆」
「はい?」
「さっきコーヒー持って来たろう?」
「はぁ」
「飲まんか?」
デスクの上に置かれた缶コーヒー。
苦笑いで見つめた。