拍手SS集

□10月SS
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 棚に隠れた隙間の窓から、ぽつぽつと雨が降り出してきた。

 ここの所、どうにも曇りの日が多かったのはこの為だったのだろうか?

 この埃っぽいデータ倉庫には……雨の音さえ、大きく聞こえる。







【昔話】







「おー。あったあった。これだ」

 先ほど、樹書倉庫を借りる――と言って入って行った弥牙さんの声が、雨の音を遮った。
 なんだかんだ言っても樹書倉庫はそれなりに広い。こんなに早くお目当てのものを見つけるなんて、さすが……年の功というか、なんというか――
「おぉ、松笆−マツハ−ありがとう。見つかった」
 倉庫からひょこり顔を出した弥牙さんに、思わず苦笑いをしてしまう。
「それは良かった。急ぎだったんですか?」
「いや、そこまで急がん。これは仕事とは別の件でね」
 敢えて、深くは聞かずにおこうと決めて、オレは小さく――そうだったんですか、と頷いた。
「松笆」
「はい?」
「さっきコーヒー持って来たろう?」
「はぁ」
「飲まんか?」
 デスクの上に置かれた缶コーヒー。
 苦笑いで見つめた。



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