斉藤受

□Straight
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「…中条さん?」



気付けば、床に押し倒されていた。
その瞳は、前髪に隠れてしまっていて表情が読めない。
そのうえ、きつく両腕を抑えられて、身動きができないときた。

(何か…怒らせるようなこと、したっけ…?)

めずらしく中条から俺ん家こねぇか、という誘いがきて、家にお邪魔した。

それで…別に何もしていない。
ただ、昼飯を御馳走になっただけだ。
その後も普通に話して、笑って…。
少しテレビに気を取られていたら…いきなり押し倒された。


「…なか、」
「斉藤」
「…はい?」


やっと中条が口を開いた。
と思ったら、斉藤の名を呼んだだけ。


「…あの、」

――すっごい気まずいんスけど。
なんスかこの重苦しい空気。
こう…上に乗っかられてるから、っていうのもあるかもしれないけど。
圧迫感がすごい。

「…俺…、何かしたっスか?」

考える限り思いつかない。
聞くのもどうかと思ったけど…聞かないとわからない。
それに、中条は黙りっぱなし。
話が全く進まない。


「…いや、そういうことじゃなくてだな…」

「…えーっと…じゃぁなんスか?」


なんだかちょっと空気が軽くなったような気がする。
たぶん、思ったよりも中条の声のトーンが低くなかったから。
どうやら、怒ってるわけじゃないみたいだ。


「お前さぁ、この状況で…何か思わねぇ?」
「えー…変な中条さん?」
「…まぁ…そう、だな」


…なんなんだ。中条さんが変だ。本当に変だ。
違う意味でちょっと怖くなってきた。


「お前は…美柴のこと、好きなのか?」

唐突な質問。それも、普通の内容の質問ではない。

「…は?」

ちょっと待ってくださいよ中条さん。
質問の意味がわからないですよ中条さん!

「いや…なんでもない。悪かったな、気にすんな」

そう言うと、中条はすっと斉藤の上から退いた。

…気にすんなって…それ無理じゃないっスか?中条さん…。
美柴のこと好きなのか、って。
…鴇さん?いや、確かに最近は優しいなって思うけど。
うーん…わかんないっスよ…。

「…気にすんなって言ったぞ、俺は」
「だって…中条さんが言ったんじゃないっスか」
「…無かったことにしろ」
「えぇー…?無理っス、気になります」
「…今度、教えてやるから(たぶん)」
「約束っスよー?」
「あぁ…(言えたらな)」





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