斉藤受

□仮に、
1ページ/2ページ





仮に。

俺がお前の事を好きだと言ったら、お前はどうする?


「…『言ったら』、なんでしょ?」
「…まぁ、な」


もっと、違う反応がくるかと思った。
驚くとか、冗談を言われたように流すとか。
斉藤は、いつもの明るさを何処かへ飛ばしたように落ち着いている。


「えーと…。中条さんがそういうコト言うところ…想像できない、スね…」


…スイマセン。

そう言って、申し訳なさそうに笑う斉藤。
困らせてんのはこっちなんだから、お前が無理に笑う必要なんてないのに。
お前は、本当の笑顔だけ浮かべてればいいのに。


「仮に、言ったとすれば、の話だぜ?」


『仮に』、『言ったとすれば』という、二つの予防線。
口説くのはお手の物なハズなのに、コイツ相手だとどうも上手くいかない。
言葉が浮かんでこない。


「…中条、さん…」


だからさ。
困ってるんなら、どうにか誤魔化してこの話題から抜け出す、とか。
答えの無い質問から逃げる方法なんて、いくらでもあるだろ?

でも、逃げることができないことをわかってて、
俺は斉藤を追い詰める。

嘘の笑顔なんて、見たくない。

そう思ってるのは、誰よりも俺なのに。

口元だけの笑顔を浮かばさせてるのは、



誰よりも、俺。






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ