斉藤受

□ネコ
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それは、別にめずらしいコトではなくて。

ただ、ちょっと。

気になっただけ。



「…あ、居た…。猫にゃん、おーいで」

家の近所で最近見つけた、黒ノラ猫。
ここらを気に入っているらしく、バイト帰りに必ず見つけるのだ。
結構遅い時間なのだが、そこら辺をうろうろしている。
猫にゃん…と静かに呼ぶと、たたた…と走り寄ってくる。

「ホント…似てるよなぁ…」

首の辺りを優しく撫でると、すりすりと懐いてくる。
…あの人も、こんな風にもっと素直になってくれればいいのに。


「…あれ?鴇さん…」

少し先に見えた、今自分を悩ませる張本人。
向こうも気付いたのか、彼の足取りが止まった。

すると、ゆっくりだけど…こっちに向ってくる彼。
…まぁ、自分から俺の方へ来てくれるようになったのはスゴいことだけど。
それでも、やっぱり…ちょっとは寂しかったりするのだ。俺でも。

でも、そんなコト。
本人に言うのは、恥ずかしすぎるから。


「とーきーさんっ!」


その寂しさを埋めるように、自分から近づいていく。
…中条さん曰く、「美柴はツンデレだから、何だかんだいってお前の事気に入ってんだぜ」らしい。


「斉藤…」
「どうしたんスか?こんな時間に。何かあったんスか?」
「いや…」

あ。困らせちゃったかもしれない。
鴇さんが、軽く俺から顔を背けた。

「あー…。まぁ、たまに何となく外にでたくなることってありますよね!」

とにかく、鴇さんにこっちを見て欲しくて。
少しでも、鴇さんの顔を見ていたい…。

「…お前が、」
「俺?」

…何だか鴇さんの顔が赤くなったような気がする…?
外の明かりは控えめで、よくわからないけど…。

「…お前が…毎日、ココ通ってるから」
「……鴇、さん」

…うわ、なんか…すごい。
顔に火がついたって…こういうこというんだ。
っていうか…鴇さんが俺に会いに…?
思わず嬉しすぎて、鴇さんに飛びつく。

「…っ、鴇さぁぁん…!」
「うわっ…おまっ…離れろ…!」

ごめんなさい、鴇さん…。
調子乗っちゃってるのは分かってるんだけど。

…少しだけ、甘やかせてよ。
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