斉藤受

□空
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「ひぇええ…!!」


――…なんていう声を。


「何…?お前、雷無理なのか?」
「とっ、鴇さぁあん…!」
「…無理なのか」

本日中条不在という、美柴にとってはものすごい好都合な状況。
このままどっか連れ込もうかと思っていたのだが…
生憎、お天道様はそれをさせる気はないようだ。

「ったく…雷が無理だとか…」
「だってー…、ゴロゴロゴローって!」
「意味がわからない」

雷なんて、自然の摂理じゃないのか?
それのどこが怖いんだ…。
斉藤は「鴇さんは強いからぁ」というけど。
それと雷はどう関係があるという。

「なんか…鴇さんなら雷もやっつけちゃいそうだなーって」
「…?」
「俺は、なんにも…力とか持ってないから…」
「……」

だから、力と雷は関係ないだろう…。

「…イメージっすよ、イメージ!っうわ、光ったぁ…」
「………」


空を光が裂く。
それは、なにか覚えのあるような感覚。


「…鴇さん?」
「……なんだ」


――ゴロゴロゴロッ!!


「―――!!!」
「ちょっ…、斉藤…っ」


…待て、この状態は…!


雷の轟音に驚いた(ビビった)斉藤は、
隣にいる美柴に抱きついた。
…腰に手を回して、胸に顔をうずめて。

「っ…」

美柴は、その手を離そうとした。
…が、そのまま斉藤の身を抱きしめた。
――斉藤のカラダが、震えているのに気付いたから。


(……マジで怖いのか)



「…鴇、さ…」
「……いい、このままで」



さっき見た、雷が空を裂いた光景。
空が俺で、雷が斉藤。

曇りきっていた空を、明るい光が染めていった。






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