斉藤受

□Close to you
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「なーかじょーおさんっ」
「…斉藤?」
「えへへ…来ちゃったっス!」









…ったく、驚いたぜ。
滅多に一人では俺ん家にこないくせに。
襲われるから嫌っスよ!とか言って。
まぁ…なんだかんだいって無理矢理連れ込んだりもしてるんだけどな。
自分から来るのは、すげぇ珍しいことだ。

部屋に入った瞬間、斉藤が叫んだ。

「わっ…もー!部屋、すっごい煙草臭いっすよ!?」
「しょーがねぇだろ…吸ってんだから」

今だって現在進行形で吸っている。
なんつーか…コレがないとどうも口が寂しい。

「…なんかあったのか?」

会話に一区切りついた所で、聞いてみた。
…コイツが、なんの理由もなしにわざわざ俺ん家に出向いてくるなんてありえない。
素直に話してくれそうな感じでもないが…とりあえず、な。

「……」
――案の定、斉藤は黙りこんだ。
ふぅ、と軽く息を吐きながら…頭を撫でてやる。
すると、力の入っていた肩が、す…と下りていった。
…どんだけ緊張してたんだか。

「ま…別に言わなくてもいいぜ。落ち着くまでココいていいからよ」
「…中条さん…」

床を見つめていた視線を上げ、まっすぐにこっちを見てくる。

なんかコイツ…もう泣きそうじゃねぇか?

そんなコトを思わせるような瞳…。
もう一度、頭を撫でてやろうかと思った時。




「っ……!…斉、藤?」
「なかじょ、さんっ……、おれっ、おれぇ…!」

…いきなり、抱きついてきたのだ。
抱きつくというよりは…甘えるような。
最初は戸惑ったものの…腰を支えてやりながら、静かに囁く。

「……どーしたんだよ…。なんか不安なことでもあんのか?」
「ふあん、ていうか…。なんか…」



――中条さんに、会いたくなっちゃった…。



「………」
「ご、ゴメンナサイ…。急にこんなこと言われても困るっスよね…!」

ぐいぐいと俺の胸を押しもどしながら、離れようとする。

…させるかよ…!
さっきよりも更に力をいれて、斉藤を逃がさないように腕の中に閉じ込める。
ぴたっ、と斉藤の動きが止まる。

「…会いたくなって…。それで?」
「そ、それで…、中条さんに…甘えたくなったっていうか…」

…なるほどな。
それで…抱きついてきたのか。
普段なら、俺が少しスキンシップをとっただけで
「セクハラ反対っスよぉぉ!!」とか言って突き放すクセに。


…ったく、可愛いすぎんだよ!


「わぁったよ…。好きなだけ甘えていいから…」
「ほ、ほんと?」
「嘘ついてどーする」
「そ、そーっスよね」

俺が甘えていい、といった途端。
きゅ…と、服の端を握ってきた。
…お前の『甘える』っつーのは、この程度なのかよ?

耳まで真っ赤にして『甘える』コイツが、
たまらなく可愛くて。



…俺はたーっぷり、甘やかしてやった。






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