「…な、かじょ…さん…?」
「……」
ことは、約30分前。
鴇さんから連絡がきて、珍しいなあなんて思っていたら。
『中条さんが酔った。あとは任せた。』
という一文。
…へ?と不思議に思っていると、ピンポーン…と部屋の呼び鈴が鳴って。
こんな真夜中、誰が…と思った瞬間、
少し頭によぎった嫌な予感。
まさかな、って軽く笑いつつ玄関に出れば。
「さーいーとーおおおおおお」
「!!!???」
…え。
「……。…さあああいいいとおお」
「え、ちょ、待ってうるさいあんたうるさい!
今何時だと思ってるんスか!」
「んー…しらない」
「あんたねぇぇえ!」
…拉致があかない。
しかもこんな時間に外で騒いで、苦情でも来たら大変だ。
「と、とりあえず中に入ってください…」
「んー。おっじゃまっしまーす」
「だから静かにしてってば!」
なんだよコレぇえ…!!
中条さんキャラ崩壊してるじゃねえか!
「もぉっ…!鴇さんったら、こんなもん寄越すなんて
何考えてるんスか…!」
部屋ん中をうろついてる中条さんはとりあえず放っておいて、
さっき机に置いたままだった携帯を
もう一度手にして。
素早く鴇さんに電話した。
そしてしばらくすると。
『……もしもし』
「ちょっとあんた!何してくれちゃってるんスか!」
『いや…だから、中条さんが『斉藤斉藤』ってうるさいから…』
「もうその時点で意味わかんねーっス!」
『………、』
なんだ。今溜息聞こえたぞ。
「溜息してる場合じゃないでしょ!
こんなん俺にどーしろっつーんスか!」
『とりあえず一晩面倒見てやれよ』
「無理ィィイ!!こんなん無理!!」
『そう言うなって。じゃあ任せた』
――ぶち。
「…え、嘘でしょ?ねえ嘘でしょ?」
通話が終わり、いつもの待ち受け画面に戻った携帯を見つめる。
…はあ、どうしよう。
「…ねえ中条さん、…あれ?中条さん?」
少し目を離している間に、中条さんが…見当たらない。
大して広くも無い部屋で見当たらないっつったって…たかが知れてる。
トイレかなんか行ったのか?と思いつつ、
扉をノックしてみても反応ナシ。
「なーかーじょーさん?………え」
…いた。