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□猫と鴉と木天蓼酒
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良いワインが入った。
しかも毛色の変わったワイン。


誰と飲むかな。












――…。


「で、俺か。」

「アルフレッドったら地が出ているよぅ?」


ワインを放り投げて渡す。
難無くキャッチしてじろじろとボトルを見る彼は警戒心の強い猫のよう!

アルフレッドを猫みたいだと言うセバスチャンも案外、的を外してないんじゃないかなァと思うけど口には出さない。


「カラスさんが怒りますよ。」

「良いのさ。今日は腹の立つ事があったから。」


好きだと言う癖に。
アタシ以外の女と話してた!!そんなような事をクイーンズイングリッシュでない言葉で言うとため息を吐かれた。あ、理解されてたんだ、恥ずかしい。(←)


「キミは紳士だから断らない。それに良い酒の味も分かる。」


ね?と言うとアルフレッドは渋い表情を浮かべた。
うー。アタシがもう少し可愛らしい見た目をしてたらおねだりが出来るのに。

所謂、『イケメン』に生れついた自分が憎い。


「私は完全に損な役割でしょう。カラスさんに要らない誤解を招きます。

ファントムハイヴの執事辺りは、」

「今はムリ。」


あの執事は怖い。
変に弱みに漬け込むのが上手いから。

案外、自分は落ち込んでいるのだと自覚したら少し泣きたくなった。
声に湿っぽさが混じらないように気をつけて殊更に口の端を曲げて見せる。


「セバスチャンを誘ったら今はヤバいもの。むりむり。」

「――…分かっていましたが、鴉さん貴女、既に出来上がっていますよね。」

「ピーンポン、ピーンポオン!!」

「…1杯だけですよ。」


優しい、優しい友人。
ブランシェール家の執事くんは女性に甘っちょろくて優しいフェミニスト。

年上だって言うけれど。
時とおり、このお人好し加減はヤバいんじゃないかと思う。


まーそれに漬け込んじゃって、救われてるのはアタシなんだけど…。
1杯と言わず、今日はとことんまで付き合ってもらおう。
口の端が自然にニヤリと弧を描いた。
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