short

□執事の女難
1ページ/11ページ



「今月の分です」

「はい、確かに」


黒髪の青年はにこやかに皮袋を受け取った。中にはぎっしりとソブリン金貨が入っている。

金貨の入った袋を渡したセバスチャンは待ち切れないように手を出した。金貨を受け取ったカラス――どことなくセバスチャンに似た青年は手に持っていた封筒を差し出した。

中には写真が1枚入っている。


「今月は1枚です」

「……1枚、ですか」

「いらないなら返して下さって結構ですよ」

「いらないとは言っていません」


奪われないよう、大切そうにセバスチャンは封筒を手にし、そっと中身を取り出した。


「――…!これ、は!!」

「スゴいでしょう。とても苦労しましたよ。満足しましたか?」


セバスチャンの手から封筒が落ち――…写真だけが握られていた。そこには布団にくるまり、子猫のように丸くなって眠るブランシェール家の執事、アルフレッド・ノイン・フェアストレイがいた。


「別アングルでもう1枚ありますが?更に、露出が少し高い寝相の写真も…」

「買いです!
それから焼き増しを!焼き増しをお願いします!!」

「毎度ありがとうございます。
ああ、アルバムはサービスとして差し上げますよ。

貴方は上客ですから。セバスチャン・ミカエリスさん」






あの騒がしい宴以来、雑貨屋《愛鳥》の雑用、カラスには上客がついていた。
ファントムハイヴ家執事、セバスチャン・ミカエリスがその上客である。

取り引きしている物は写真と金貨、そしてとある条件。


「くれぐれも先輩と必要以上の接触をしないで下さいね?」

「分かっています。
その代わりに来月もまたお願いします」

「了解です」


明るい鳶色の目を細め、カラスは美しい微笑を浮かべたまま、うっとりと写真を眺めている執事を見ていた。


「(セバスチャンさんに誘われたらホイホイ着いて行きかねませんし…アルフレッドさんの事は先輩の方が気に入ってるみたいですしね…!何て羨ましい!!)」


非常に自分勝手なそれにより、アルフレッドは被害を被った。


「腰の砕けるキスをアナタに贈りましょうか?」


アルフレッドの言葉を思い出してキリキリと歯を軋ませた。

アルフレッドさんはセバスチャンさんが苦手…いえ、お嫌いのようですし、当分は嫌がらせをしましょう。



【執事の女難】
――少しはアルフレッドにも責任があるのかも知れない。




※騒宴執事の少し後の話
多面鏡の黒執事連載《女王の愛鳥》の夢主がパラレル出演
※腐?要素
※女装諸々。ポロリもあるよ!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ