FL:HalloweenNight

□1:RIRA
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「…はい?」

言葉の意味がわからない。
相手の言語がおかしいわけではない。
ただ、内容に理解ができない。

「魔王様に向かって無礼だそっ!」
「構わない。」
「しかしっ…。」
「構わない。」
「「……。」」

暴君として名を馳せる魔王、KAIN。
魔物の命など玩具同然。
いらなくなったら捨てる。
それゆえに、輝きのない瞳で見据えられては誰もが言葉を飲み込む。
しかし、暴君故に、秩序が保たれているのは間違いない。

「RIRA。俺の命令、きけるな。」
「…はい。」

幼少の頃より側で使えてきた。
どんな命令も可愛いわがまま。
今まではそうやって受け入れてきた。
もちろん、過ちは正すこともある。
しかし、今回は受け入れなければならない方。

「こっちの掃除は俺が直々にやる。外はお前の好きに掃除しろ。」
「かしこまりました。」

こっち、とは、魔界。
外、とは、人間界。
近年の魔界では、内戦が激しさを増している。
原因はZEBUBU。
KAIN様の弟にして、唯一の反乱軍。
頭の弱さから王座はありえないが、頭の弱さから周りに踊らされてしまった。
その影響は外にまで向かい、その処理を命じられたのが私。

「本来なら俺の側から片時も離す気は無いが、お前以外に信頼できるものがいない。」
「……。」
「わかるな。」
「はい。」

片膝を付きひざまづく私の前に影ができる。
影の主は剣を抜き、顎に添えてきた。

「帰ってきたら、たっぷり可愛がってやろう。」
「……。」

刃物の冷たい感触が頬へ移る。
顔を上げなければ消えない傷が顔に残る。
無言の脅迫。
いつもの事と思いつつ、ゆっくり視線を動かす。

「任せたぞ。」
「…はい。」

従う他ない。
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