FL:HalloweenNight

□5:drug
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通販カタログ。
魔界から外の世界へ来たものへの専用通販。
どんなものでも、カタログに乗っていれば注文の翌日に届く。

「……。」

特に欲しいものはない。
外でも大概のものが揃う。

「……。」

それでも、つい目を通してしまう。

「……。」
「何か、欲しい物があるのか?」
「…ない。」

カタログに乗っているものは多種多様。
服や食料は当たり前。
秘薬はさすがに興味深い。

へー。こんなの開発されたんだ。

外と同じく、痩せる薬は人気商品。
しかし、魔界の通販はそこに留まらない。
新しいカタログには、媚薬や惚れ薬の類いが幾つも紹介されている。

「……。」
「……。」

リビングで通販カタログを眺めていると、SAIが向かいに座る。
媚薬のページを誰かと見るのは違和感があった。
だけど、気になるのだから仕方ない。
お互いに沈黙したまま、説明書きを読んでいる。

「……。」
「…これ、きくのかな?」
「……。」
「……。」

使う予定はない。
でも、感情を変化させる薬は興味深い。
私の能力と同じ系統だ。
深い意味はなかったものの、黙り混むSAIとの空間が重苦しい。

「……。」
「……。」

…なんか、変なこと言ったかな?

「あ。夕飯の支度しなきゃ。」

沈黙が面倒。
気心知れた仲だけに、普段は沈黙が心地好い。
だけど、なぜか今は重い。
少し早いとは思いつつも、キッチンへ向かう。
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