FL:HalloweenNight

□9:remembrance
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私の生まれ育った場所は、魔界でも僻地と呼ばれる場所。
見渡す限り、瓦礫ばかり。
草花は育つことがなく、芽を出すことすら知らない。
視界は霧に阻まれ、正しい情報を得ることすらままならない。
だけど、そんなことはほんの些細な現実。
私の日常に、なんら支障はない。

ある日、私の世界から色がなくなった。
それはなんの前触れもなく、全てを奪った。

天変地異。
そう言ってしまえば、それでお仕舞い。
空は茜より深い深紅に覆われ、地は裂かれ暗黒の穴を生み出した。
その闇はありとあらゆるものを飲み込んだ。
助かったものも、不吉な空に心を支配された。
狂気に蝕まれ、命あるものを狩り出した。
身内でさえも。

この日、私は全てを失った。
生き残った村人全員を切り刻んだ。
変わり果てた姿を見ているのは、耐えられなかった。
殺戮を繰り返し、過去の記憶を閉ざした。

生暖かい真っ赤な液体に囲まれてた。
行き場を無くし、生きる意味すら見出だせない。

そんな私が出逢ったのは、小さな光。
天から舞い降りた、小さな赤子。
生きている。
その事実だけが、私を現実に繋ぎ止めた。

国統ベル者闇ヲ生ミ出シ闇ヲ打チ払ウ。
希望ヲ与エ望ミヲ奪ウ。

古より魔界に伝わる、魔王陛下の誕生。
幾度となく繰り返される言い伝え。
私は歴史を目の当たりにした。

この温もりが私の全て。
このお方だけは、私がお守りする。

だから私はここにいる。
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