抜け道をぬければ

□その先に
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その先に











プォォ――カタンカタン…





「あやべんの実家って結構近かったんだね。片道2時間かぁ」

「あぁ…距離は関係あらへんかったからなぁ」













「…親父、行きたい高校が出来たんや。みんなには内緒で」



「…わかった麗人。お前の始めての頼みやからな、

俺ぁ誰にも言わへんよ。堪忍な。

そこまで追い込まれてたなんて思わへんかった。高校…楽しんで来いや」








「……」







その後本当に誰からも連絡はなく

俺はホッとした



ホッとした後、傷ついた

俺は…何をやっとるんやろ

家から飛び出て、罪悪感から逃げ回って



…いや、ホンマは逃げる必要すらないんかもしれへん



だって









もうどこにも

俺の居場所なんてあらへんやないか





ええ加減、認めるべきかもしれん





























「まさか家に着く前に、次女以外全員と遭遇するとはね」

「……黒崎」

「ん?」





もう、決めた。
ここまで着いて来てくれた黒崎には悪いけど。





「ありがとな」





もう、決めたんや。





「今日、付き合うてくれて」



「えっ、でもまだ家に帰って挨拶とか…」



「…いやそれは、今は、ええわ。考えてみたらこんな半端な時期に顔出すんもへんやし」





でも、今までとは違う。





「…ああ。逃げるんやないで。そうやなくて、何やろな…」







色々想像して脅えとったんや。

俺が逃げた事をずっと恨んどるんやないやろか とか。

外見も別人になっとるんやないやろか とかな。







「せやけど」



「あいつら、何も変わっとらんもん。えらい拍子抜けしたわ」







あ、なんや久しぶりに人前で笑った気がするわ。
馬鹿やったな俺。





「結局、俺は自分の想像に脅えとったって事や。そんで、そっからもずぅーっと目を逸らしとった」

「…あやべん、私も一つわかった事があります。」

「何や?」



見透かしたように俺を見てくる黒崎。





「一人が好きって  嘘でしょ」

「……っ ……なんでわかたんや…」





めっちゃ恥ずかしいやろ!
一人好きの振りしとったとか…!!
カッコ悪いわ俺。





「流石にここまで見てたらわかるよ。

みんなへの義理立てだったのかもしれないけど…

つまんなさそうに高校通えばいいなんて

誰も思ってないんじゃない?」










高校 

楽しんで来いや










ホンマ馬鹿やな。俺。





「…そう…やな。

俺の弟達にそんな奴おらへんわ…」





ちょっと考えたら、わかることや。







「ちょっ、ちょっとあやべん」

「何やなん」







バシバシ俺の肩を黒崎が叩いてくる。





「あれっあの子。どう見ても重量オーバーじゃない?」



「ん?ああ…小末…!!?





また綾部家かい!!!





「なんであいつが買い物なんかしとるんや!?上の奴らは何してん…」







コンッ

「「 あっ 」」



どしゃっ



こ、転んだ…!
やっぱ泣くか。
前も転んだとき――…



むくっ…



あれ。泣かへん…
がんばって堪えてるんや。





「…あいつ。前やったら大泣きしとったのに…   強なったなぁ…」









「あら、大丈夫?」



「偉いなぁ。よく我慢したわねー。おつかい?」



「おっ、おつかいはうめちゃんのなのっ」



「「 ? 」」





小末は心配してくれた女の人に訴えていた。
必死に涙を堪えながら。







「でも、小末おてつだいするの。

いい子にしてたらね、かえってくるの。

泣いちゃだめだって

わるい子にしてたらお兄ちゃん

いなくなっちゃったの」







わるい子ちゃうで、小末…

なんやそれ

お前はホンマに







「いい子にしてるの。   そうしたら」









かえってくるんだよ








「……っアホ」





小末の小さい体を抱きしめた。
俺まで泣けてきたやろ…



なんやねん

それ…







「小末ー」

「小末ー、どこ行ったー?」

「こずっ…」





梅次、一華、秋三、幸四郎…





「…っ〜〜〜っ この      バカ兄貴っ!!!



おかえり…っお兄ちゃん



「おかえりぃ…っ」









俺が見ようとせんかっただけで

居場所は たくさん

用意されとったかもしれへん



家にも

教室にも



少なくとも1か所

俺は知っている











「ありがと、綾部!」












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