抜け道をぬければ

□記憶のあの子
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記憶のあの子











「髪、伸びたな」





そのせいか
山瀬はちょっと大人びて見えた。





「でしょ」





俺の記憶の中のコイツは肩に付かないくらいの茶髪で

俺の勝手な想像でコイツは俺に会うたら
怒っとった。





「久しぶり。元気だった?」





目の前のコイツは十分にくくれる髪を横に束ね

実際に会うたら
笑ってくれた。





「一応な」

「よかった」





なに言えばいいんや。





「…山瀬。あのな」

「…なに?」

「スマンかった。あの時、突き放したりして」





山瀬は、なんて言うやろか。

そもそも、俺と山瀬はなんなんやろか。

仲のええ友達…?





「大丈夫。綾部も色々大変だったんでしょ?

あの時は、確かにつらかったけど…

でも、また会えたから。もう、大丈夫」



「せやけど…また会えんようになるな」



「そだね」



「こっちには、戻ってきたりするんか?」



「…たぶん、もうない」



「ほおか…」





なんや、このモヤモヤした感じ。
なんでこんなに…





「あ!!」

「な、なんや!?」

「電車の時間が!」

「あ、スマン!」

「じゃあ、急ぐから!またね!!」

「み、見送りは…」




行ってしもた。
まあ、アイツらしいっちゃアイツらしいけど。





「…連絡先も、聞いてへん」















またね、か…











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