備品室

□この距離
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あと少し、あと少し…――















「ヤベッ!黒崎、俺ちょっと教室に忘れ物取ってくるから」

「うん!いってらっしゃ〜い!!」








ガララ





「「 あ 」」





早坂が放課後の教室に入ると、そこに一人の女子生徒がいた。





「早乙女…お前、何やってんだ?」

「居残り。佐伯先生にね、一杯宿題出されたんだ…」





愛は早坂にプリントを見せる。
ざっと5枚ほどある。





「考えてもわかんないだよ!!鬼だよあの人!!」

「ハァ…見せてみろ」





ガタ





早坂は愛の前の席の椅子を後ろに向け座る。



「なんだ。どんだけ難しいのかと思ったら、こんなの簡単じゃん」

「早坂君。君と私では、頭の作りが違うんだよ…」



愛が頬杖をつき、大袈裟にため息をつく。



「シャーペン貸せ」

「え、うん。ハイ…」





カチカチ





早坂は芯を出すとプリントに公式を書いた。





「この問題はこの公式に当てはめてだなァ…」

「う、うん…」







なんて言うか…今思ったら近いな、早坂君。
ど、どうしよっ、緊張してきた!!







「…オイ、聞いてんのか?」

「えっ!?あ、うん!!」

「…顔、赤いけど熱でもあんのか?」





スッ





早坂が愛の額に片手を当てる。





近っ…

「チカ?」

「早坂君、近い…」

「………」





早坂は数秒ピタリと固まる。







「うぉっ!?ワリィ!!」




ガタン






早坂は顔を真っ赤にして勢いよく立つ。





「うん。そうだな。ここらがいいかな」





早坂は愛の3つほど前の椅子に座り言う。





「いや、早坂君。それ離れすぎだよ。問題見えないでしょ」

「…そ、そうだな」





カタ





また愛の前の席に座る。



「…えっと、だからこの問題はだな」







すぐ目の前に君はいる

手を伸ばせば届く距離

あまりに近くて

手が伸ばせなくなっていた





近くて、もどかしくて











だから愛おしい







ピタリと止まった早坂君の手



顔を上げると





こっちを見つめる真っ直ぐな瞳…







ゆっくりと近付く2人の影











2人のこの距離



⇒おまけ。 
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