備品室

□ニガテ
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誰にだって、ニガテなものがあるんです。















「なあ愛…」

「な、なに?」





麗人君が私をじっと見ながら
声をかけてくる。





「なんで自分は俺と目ぇ合わせへんのや?」

「…そうかな?」

「そうや。今も微妙に目、そらしてるやろ」





確かに、否定はしない。
だって仕方ないんだもん!





「だ、だって…気まずい」

「気まずい?何がや?」

「ニガテなの!麗人君と目、合わすの!!」





今私変じゃないかな、とか。
それに、どきどきしちゃうの!!





「人の目見んのは失礼や。ちゃんと見ぃや!」

「ええ!?」





ずいっと顔が近くなった。
絶対私真っ赤だ!







「………」

「………」







なにこの空気…
目が離せないじゃん!
というか、恥ずかしい。





「……っ」

「へ?」





私より先に麗人君が目をそらした。
なぜ…!?





「ちょいっ!?なんで麗人君目、そらすの!?」

「それは、ほやから…いやアカン、なんでもあらへん…」

「あ、ずるい。気になるでしょ!」





麗人君が私から顔を背けたまま
左手で口を隠す。









「…き」

「き?」








よく見れば、その顔は真っ赤だ。
たぶん、私よりも。













「きすしたくなるんや。この距離」











いつもより弱々しいその声に
ちょっぴり困らせたいという思いが芽生える。





「じゃ、どうぞ」





そう言って目をつぶってみた。



「…愛」



くる…!!
唇への感触を期待したその時。







「あほかっ」

「い゛っ!?」






おでこが痛い。
目を開けたら目の前にはでこピンの手が。





「なんでよ!!」

「お前があほ面してるからや」

「うぅ…私恥ずかしいじゃんか…」





麗人君のばかぁ…
へたれ!乙女心をなんだと思ってんだ!!







「ああ…もうしょげんなや。悪かったって」





ぎゅぅ





抱きしめられて
痛むおでこに優しいキス。





「…へへ」

「ホンマあほやな愛は」











ニガテもたまには



私の中で「あほ」は愛がこもっている言葉です。





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