花笑みの日に

□登校
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♯7.登校






「咲月ー」

「なぁにー?」





朝髪を結んでいる咲月に、母は声を掛ける。











「悠太くん来てるわよー」

「うそっ!?」









咲月はなぜ悠太が来たかもわからないまま、急いでカバンに教科書などをつめる。





「咲月お弁当!」

「ありがとっ」





慌てて靴を履き、ドアノブに手を掛ける。
ふと手を止め玄関の鏡を見て髪を整えた。
その鏡の彼女の頬は、ほんのり赤く映った。







ガチャ







「おはよ」

「…お、おはよ」







咲月は悠太に恐る恐る近付く。







「…て、何で来たの!?」

「いや、一緒に行きたくて」

「そ、そうですか」







悠太の一つ一つの行動や発言にドギマギとする咲月。
しかしその緊張はなぜか彼女にとって心地よかった。





「なんか、久しぶりだね。悠太とちゃんと話すの」

「そうだね」

「か、彼女さんとは上手くいってるの?」

「…別れました」

「え」





咲月は驚き足を止めた。
悠太も少し前で止まる。





「他に好きな人がいるから」

「…ゆ、ゆう」

「咲月」





ゆっくりと振り返る悠太。
互いに、相手の声意外聞こえなくなっていた。
周りに二人の邪魔をする物は何もない。



















「好きなんだ、咲月が」





















一年越しの、二度目の告白。
咲月は顔が熱く火照るのを感じた。
それが日差しのせいではないことは確かだ。









「あ…その」

「返事、いつでもいいよ」

「…うん」

「それに今回はさ、好きって言ってもらえるようにがんばるから」









惚ける咲月に彼が「学校、遅れるよ」と言うと、咲月は駆けて彼の横に並んだ。














♯7.登校 end
 

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