Under Lover

□Engagement
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1.Engagement
                許婚








一流企業ではない呉服店の娘である私、
茅野夏祈が桜蘭高校に入ったわけ。
それは、中学三年の夏休み前に遡る。





「地元の高校ではなく、あの桜蘭学院に入学、ですか」






そう。父、誠からあの有名な私立桜蘭学院へ入れと告げられたのだ。



「そうだ。しかし心配は無用だ。向こうの街には、お前がきちんと生活ができるように部屋も借りてある。
それにもしものことがあったら、その時はあの学校にはお前の





許嫁もいる」





父は平然と言った。
それは、予測無しの事実で。





「…い、許婚?」



「お前にはそろそろ言う時期だと思ってな。お前には許嫁がいる。ずっと小さい頃からな。
それで向こうの親とついこの間話し、お前を桜蘭高校に入学させることになった」



「………」





黙って父の話を聞いた。





「お前の学力なら特待生として入学できる。そして、卒業後には嫁入りしてもらう」





父は「相手の写真とお名前はこの白い封筒に入っている。見ておけ」
とだけ言うと立ち上がり部屋から出て行こうとした。





「待ってください!」

「…何だ」

「なぜ、嫁入りなのです?」





この家の跡取りは現在、一人娘である私だけだ。

いや、母は病気で子はもう産めない。

父と母の血を持つ跡取りは現在もこれからも無い。

その私がなぜ嫁入りを…





「もう何年も売り上げが安定していない。
女のお前一人では不安なんだ。
相手の親は昔からの友人ということでこの話を承諾してくれた」



「でも私、結婚相手くらい自分で選びます。
お店だって私の手で何とかできます!」



「アイツは先の公爵家。幾つもの会社を経営している。
うちの店の経営の援助をしてくれる」



「………でも」



「夏祈。運がよかったんだ。それに相手もお前に似合いの青年だよ」







納得いかない。

いくら頼まれてもコレだけは。

そんな決め付けられた出会いなんて

絶対にお断りだ。







「私だけでは不安な理由は、女だからでしょうか?
私は女だから心が弱い。そう思ってるんですね?」



「…そうだと言ったら?」



「お父様に私の度胸を証明してみせます。」



「…どうやって」





私は父に手渡された白の封筒を力をこめて破った。









「男の姿で入学します」





「なっ…!?」





「中々そんな事出来る人はいないでしょう。
でも、私はそれで3年間乗り切ってみせます。
もちろん、そんな許婚を好きになったりしません」





決められた運命なんて、私は嫌。

きっと運命は自分で変えられる。







もう一度。







ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ曰く

人は、運命を避けようとしてとった道で

しばしば運命にであう。











少女の赤い糸を手繰り寄せるのは、いったい誰なのか――…

























〜To be continued〜
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