絶対束縛主義


□全3
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私は愛里の筆箱を取りに体育会の器具庫に居た。
確か愛里の筆箱は白地にカラフルな花が刺繍されてるやつ。
あんなものを忘れるなんて、なんとも愛里っぽい。
小さいものじゃないし電気なんか点けなくてもすぐに見付かるだろうと思ったけど、なかなか見付からない。
ボールと紛れて箱に入ってしまったんだろうか。
それだったら探し出すのは大変になるなぁ…。
電気を点けにいこうとした時。

コツン。

背後で足音がした。
薄暗くなっている器具庫は少し不気味に感じられるところもあって、少しの恐怖心と一緒に振り向く。
入り口に愛里が立っていた。
ほっと胸を撫で下ろす。

「なんだ愛里かぁ。ビックリしたー。」

愛里は返事もせずに淡々と歩を進めてくる。
私が早く見付けてこなかったから怒ってるんだろうか。
ただ足音だけがコツコツと響くのが不気味だ。

「何で来たの? 私1人で大丈夫ってさっき言ったのに。」

空気に耐えられなくて、当たり障りのないことを言ってみた。
愛里の様子見、なんて言うのは親友に使うような言葉ではないだろうけど、敢えて言葉にするなら“様子見”だけの為の台詞。
けれど、ただそれだけの台詞に声が裏返ってしまう。
愛里にいつもと違う雰囲気が漂っている。
様子見なんて意味が無いくらいの。
思わず半歩後ろへ下がる。

「ちょっと明美と2人で話したいことがあって…。」
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