「お前がどうしてもって言うなら、俺のオンナにしてやってもいいけど?」
私が恋した人は、俺様でした。
「おい、お前」
柄の悪い声だなーなんて思いながら歩いていたら、頭をポコッと軽く叩かれた。
「お前だよ」
不機嫌な顔で振り返ると、私の真後ろには丸めた羊皮紙を手にしたシリウス・ブラックが立っていた。
『目を付けられないように気を付けた方がいいわ』
いじめられていたスネイプを庇った時に、リリーが私にそう囁いたのを思い出した。
「な、何の用?」
強がってみたものの、それはお見通しだったようで、彼は口の端を意地悪くちょっと上げ、私に顔を寄せてきた。
「お前、さっき俺たちの邪魔した奴だよな?」
急に近付いたことで端正な顔にはらりと掛かる前髪はさらりと滑らかで。
(わ……顔近い!!)
自分の意思に反して跳ね上がる心臓。私は一気に顔が熱くなっていくのを感じた。
「悪戯仕掛人の邪魔するなんて、いい度胸じゃねえか」
「そ、そうやって弱い者いじめばかりして!!ただのいじめっ子集団じゃないの!!」
「面白い女」
シリウスが顔をさらに近付けるので後ずさるが、壁に追い詰められてしまった。
「お前がどうしてもって言うなら、俺のオンナにしてやってもいいけど?」
「は!?」
現状が飲み込めない私はポカンと口を開けたまま、目の前でニヤニヤ笑うシリウスを見た。
「よし、明日のホグズミード休暇一緒に行ってやる。集合時間に遅れんなよ」
そう言い残し、スタスタと廊下を行ってしまった。
「な、何なのよ……」
すっかり熱を帯びた頬を押さえながら、私は彼の背中をぼんやりと見つめるしかできなかった……。
*****
シリウス
「なんじゃこりゃ!!」
ジェームズ
「ホグワーツ文芸部の作品集だよ。ちょっと部室から失敬してきたのだ」
リーマス
「シリウス、カッコよく書いてもらって良かったね……ぷぷ!!」
シリウス
「嬉しくねーよっ」
ピーター
「他にはどんな作品があるのかな……。ちょっと怖いかも……」
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