24時 キラ便

□かごめかごめ※
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絹のように細くつややかな茶色の髪。長い睫毛の下に添えられた、大きくて深みのある光を放つ菖蒲色の瞳。形の良い唇には、存在を主張するかのように紅い紅が塗られていて、その上に塗られた蜜が濡れたように輝いている。整った顔を支えているか細い首筋も、酒を注ぐときの白い指先も、どれも美しい。
この遊女を買おうと決めたのは、先客がこの部屋に入るのをたまたま目にしていた時に、部屋の中にいるこの美しい遊女を見てしまった所為だ。見えたのはほんの一瞬だったが、遊女の美しさに気づかされるには十分な時間だった。俺の相手をするのにはこれ位の女がふさわしい。

「やはりお前を買って正解だったな」
「お客さん、物好きだね。とっくに客のついていた僕を横から奪い取るなんて。馴染客でもないのに」
常ならば、いったん客のついた遊女を後から買うことはできない。それが出来るのは、馴染金を払い、何度も足繁く通う「馴染客」だけだ。俺が後からこの遊女を買おうとした時、最初は番頭も渋っていたのが正直なところ。だが、そこは金がすべてのこの世の中。先客の3倍払うと言ったら、番頭も目の色を変えてあっさり承諾した。俺は別に自慢するでもなく、この事を遊女に話して聞かせた。
「ふぅん。お金持ちなんだね、お客さんは。そういえば番頭がどこぞの財閥の方だとかいってたような」
「ああ・・・まあな」
「どちらの財閥の方なの?」
「何故?」
「え・・・?」少し驚いた顔をして遊女がこちらを向いた。
「何故そんな事を聴く。どこの財閥の男であろうと、お前にとっては大金を払ってくれる客。大した差はないだろう?」
「・・・・・・・・」
「ふん。こんなときに上手い物言いをしてこその遊女ではないのか?」
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