-StrayWolves戦記-

□【真実とさだめの果てに】
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-T-

BLUNCAの目に光りがうつる…。それはありえないことであった。
最期の記憶は兄の腕の中…もぅ言うことを聞いてくれない自分の手足を
精一杯伸ばして兄にすがりついた。
景色が涙で歪み、ぼやけ、何度も呼んだ兄とJENDの名。
本来ならばそれで終わりのはずであった。

指先に力を込める。……動く。生きている??
困惑するBLUNCA。とりあえず起き上がってみる。
柔らかい草むらに一つの焚き火跡が燻り、崖下に広がる海原が朝日を照り返している。
キラキラと輝く美しい光景。それを眺めながらBLUNCAはくすりと笑った。

(なぁんだやっぱり私死んじゃったんだ…もしかして天国にこれたのかな…
ナンだか思っていたより現世に近いものなんだね…)

――そして数刻の間、じっと膝を抱えて海を眺めていた。








どれくらいそうしていただろう。ふと、遠くで一匹の獣の遠吠えが聞こえた。
最初はなんとも思っていなかったが、それは段々と数を増し、近づいてきているように思えた。
…不審だ。BLUNCAは長い耳を欹て、気配を探る…。近い…。

立ち上がり、さらに嗅覚、視覚も尖らせていく。
ついに獣を目で捕らえた。西南西の方角に2匹、南に3匹、真西に6匹…。
否、まだ数はどんどん増えている。
BLUNCAは着ていたものを探り、一本のナイフを見つける。

(チッ…こんなんじゃダメだ!だけど…!!)

臨戦体勢に入ると同時に、獣の気配も静まる。
こちらの様子を探っているらしい。

突如BLUNCAは走り出した。先手必勝である。
こんな鈍らのナイフではとても勝ち目は無いと踏んだのだ。
ならばこれ以上数を増やされる前に突破しなければならない。

敵を捉えた。狐?…いや、オオカミだろうか?
BLUNCAはその一団に突っ込んでいく。

突!!

キャゥン!とオオカミが尻尾を巻くのを見計らって、素早くナイフを返し2匹目へ…。
次々となぎ倒していくBLUNCAであったが、獣たちはどんどん増え、減っていく気配が無い。

「なにょこれ!?ココ天国じゃなかったの?」

躍起になってきていたその時であった。
オオカミの1匹がBLUNCAの足首を捕らえた。
その隙を逃さんと残りの獣たちが一精にBLUNCAの急所を狙って飛びかかってくる―――!!

(まずい!!)

BLUNCAは目を瞑った。奥歯を噛み締め、痛みが来るのを待った。
しかし、数秒経ってもそれは来ない…。
不思議に思い、片目をうっすらと開けると、そこには獣の死体と
どこか見なれた男の背中があったのだった。

「よう!おてんば嬢ちゃん。起きたんならそう言ってくれよな。探したよ。」

聞き覚えのある声。どことなく雰囲気は違うが、その姿は記憶と全く変わりない。
見間違うはずが無かった。

「JEND!!」

BLUNCAは涙した。もう会うことは無いと思っていた婚約者の姿。
思わず飛びつき、力いっぱい抱きしめる。しかし…

「おい!ラン!?そんな格好で引っ付くなよ、気持ち悪りいだろうが!!」
といってJENDはBLUNCAを突き放す。

(……え?)

JENDの意外な返答にBLUNCAは驚いた。
”ラン”とは兄の愛称である。
何故?自分はBLUNCAであるのに…。

「何言ってるの、私は”ブラ”だょ?それとも兄上もご一緒DEATHか?JEND??」
独特のイントネーションでしゃべるBLUNCA。
そしてJENDはふと違和感を感じた。

「あん?”私”だと…?」
するとJENDは突然あぁ!と言って手を叩くと苦笑しながら言ったのだった。

「すまん;お前が本物のBLUNCAなのか。初めまして…だよな?ようこそ100年前へ!」

「えぇっ!?…何、何どういぅ事??」
BLUNCAはさっぱり状況がつかめない。
困惑しているBLUNCAに、JENDは先ほどのことを詳しく話して聞かせたのであった。
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