薔薇の間
□Angel/翼と涙と少女
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雑居ビルが立ち並ぶ都会の片隅で、それはビルとビルの間にある狭い隙間に身を隠していた
一見しただけでは、それは黒いゴミ袋にしか見えなかった
故に、それを探して駆けずり回っていた黒いスーツの男たちは、気にすることもなく走り去って行った
彼等の足音が遠ざかると、そのゴミ袋は動いた
正確には、ゴミ袋ではなく、それは黒い服を着た少女だった
少女は、緑がかったグレーの瞳をぱちくりと、一度瞬きをすると、するりとその場から通路に出ると、男たちが立ち去ったのとは逆方向に走り出した