サモンナイト
□表裏の仮面
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薄暗い街並が見下ろせる城のバルコニーで、レオンは夜風を肌で感じていた。
レオンの服装は普段身にまとっている軍服姿でなく薄着で、風が身に染みるのか軽く身震いをする。
***
レオンが軍人として所属するのは、崖城都市デグレアの遊撃騎士団の部隊である。
デグレアの位置する場所は山岳部なため、夜は相当冷えた。
今宵は金色に輝く月が頭上に浮かんでいて、手を伸ばせば届きそうなほど。
見張りのいない無機質で広いバルコニーからひとり月を眺めることは、今のレオンの日課になっていた。
***
「こんな所に居たのか」
レオンが声のした方向に振り向くと、同じ部隊で同期のイオスが、いつもの鎧を着ておらず白いシャツ姿で立っていた。
「今夜は冷えるぞ?」
イオスはいつもレオンのことを心配してくれる優しい性格だが、表情は至って普段のポーカーフェイスのままだ。
「また月を見ていたのか」
『うん、日課だからね』
「…まったく、お前はそんな姿で…。これでもかけていろ」
イオスが持ってきていたのは毛布だった。
『私がいるのを知っていて持ってきてくれたんだ?』
「…風邪をひかれたら、相棒として足手まといになるからな」
イオスはムッとした表情をしながらも、照れ隠しに髪を弄った。
イオスが優しいことにレオンは百も承知だ。レオンは嬉しそうに微笑むと、毛布を受け取りその場で広げた。
『ん?』
だがそのサイズは、レオンひとりで被るにしては相当大きいものだった。
『これって、ダブルサイズの毛布?』
「そうなのか?」
『そうだよ。こんなに大きいもの。ここまで重かったでしょう』
「いや、気にしていなかった。備蓄倉庫から適当に選んで持ってきたからな」
イオスは不思議そうに首を傾げた。
『…もしかして、最初から私と一緒に被るのが目的でダブルの毛布を…?』
「なッッ…何を言っているんだ。そんなんじゃない!」
思いもよらないレオンの言葉に、イオスはムキになって否定をする。
『ごめん、冗談!…でも寒いから、イオス一緒に包まろう?』
「僕は遠慮する。ひとりで使え」
『…それとも、もう自室に戻っちゃうの?』
イオスは、ふと見せたレオンの寂しげな表情に“コイツも、たまには可愛いことを言うものだな…”などと思った。