リクエスト・捧げ物
□前髪の悲劇(仮)
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今日は風がかなり強い
しかも遅刻気味だったからダッシュで部室に飛び込んだ。
そしたら部員達は俺を見て目を丸くした
「?…お前等どうかしたのか?」
俺が質問するとはっとしたように佐久間が声を上げた
「あ!!お前辺見か!!」
「はぁ!?当たり前だろ?」
「あぁ!!辺見先輩でしたか!!」
え、何これどういう事?
なんて一人テンパってると源田が助け船(?)をだしてくれた
「辺見、前髪が降りてると雰囲気全然違うな」
…あぁ、
良く見れば視界に前髪が映る。どうやら風の中を走っているうちに前髪が降りたらしい
「ダメですよ先輩!!先輩はデコがないと可愛さ半減、いや八割減です!!」
「どういう意味だ!!」
「そのまんまだハゲ。お前はデコあってこその愛されキャラだ。」
「ひでぇ…」
二人のあまりにもきっぱりとした言葉は少なからずショックだった
「俺はどんな辺見だって好きだからな?」
フォローのつもりか俺の肩をぽんぽん叩きながらそう言ってくる源田に感銘していると佐久間と成神の鋭い視線がこっちに来た
「ヒッ…!!」
源田は何かを察したらしくそろそろとロッカーの角に移動してしまった
人って視線で殺人が出来るかもしれないと下らない事を考えてしまった
それより……
「どうすっかな……」
このまま前髪を放っておく訳にはいかない(気がする)が生憎櫛を持っていない
暫し考えていると
「「じゃあ俺の貸してやる/あげます!!」」
同時に俺に櫛を差し出す2人。
良く持ち歩いて居たな、とか思いながらも先にだした佐久間のを借りようと手を伸ばした瞬間、ガッと手首を掴まれ引っ張られた
「ちょ、おい咲山!!何すんだ!?」
「前髪直すんだろ?俺の貸してやる。」
「?あぁ、サンキュー…」
今まで会話に参加してなかった咲山が急に手を引いて歩きだしたから驚いた
「咲山、急にどうした?」
「別に……?」
それ以上会話はあまりなかったがそのままトイレに行き、前髪をいつものにきっちり直して貰った
「サンキューな咲山」
「おぅ。…そうだ辺見、」
「ん?」
呼ばれて向き合う形になった途端、咲山はトレードマークのマスクを外した
「辺見、普段とのギャップは俺以外に見せるな」
そう言い、おでこにキスをしてきた
「ばっ…!!咲山!!」
「そういう表情も俺以外に見せるなよ?」
にやりと笑ってマスクを戻す咲山。
お陰で表情が分からなくなったが相変わらず笑っている
「〜〜!!ったく、お前には適わねぇな」
――――心からそう思った
(咲山先輩にもってかれた…)
(咲山許すまじ…!!)
(あー…辺見も大変だな…)
End