一万HIT小説

□歩幅、揃えて、白旗振って
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買い物を頼まれた俺が商店街を歩いていると前方に見慣れた青いポニーテールの後ろ姿があった。




「風丸っ!!」



俺が名前を呼べば振り向いて




「円堂か…!!」



と確認の声を上げた。
普段家が違う方向の俺達はここまでは一緒には来ない。
それなのに風丸がいるのは珍しい事だった。




「どうしたんだ風丸?家はこっち方向じゃないだろ?」
「あぁ、ちょっと図書館に寄っててな。たまたまこの道を通ったんだ。円堂は……お使いだな」
「正解」




図書館帰りの風丸に荷物が重くて嫌になるなー、と軽く愚痴ればカラリと笑ってお疲れ様、と言ってきてくれたた。
しばらくして気が付けば俺達は並んで歩いていて、歩幅を合わせていた。





―――俺、こういう時間好きだな
歩いていて、そう思った。自然と同じになる歩幅、行き交い、すれ違う人達の笑い声に混じって俺達の声が耳に響く。
そういうのが俺は堪らなく好きだった。




「?どうかしたのか円堂」
「あ、いや!!何でもない何でもない!!」




危うくその事を口にしようとしてあわてて誤魔化す。
しかし長年一緒に過ごしてきた風丸に言わせれば見え透いた言い訳な訳で……





「なんか円堂、幸せそうな顔してる。いい事あったのか?」
「え!?あー、うん、あったと言えばあった…かな?」
「ハハ、なんだその曖昧さ」




なんて言えば分からなくなった俺は何とか逃げ道を探そうと辺りをキョロキョロした。
すると少し先の広場の所に移動式のクレープ屋があることに気が付いた





「あ!!かっ、風丸!!俺クレープ買いたいんだけど着いてきてくれないか?」
「クレープ?いいけど男2人で買うものじゃないな(笑)。ほら、現に今もカップルが買っていってるし」



確かに、男子2人が買いに行くのは些か抵抗があるのかも知れないが風丸は快くOKをしてくれた。





『いらっしゃいませ。ご注文の方はお決まりでしょうか?』



模範と思われる接客のフレームを聞いた俺達は揃って注文書を見る。
俺が奢ると言ったのに風丸は要らないの一点張りだった。
ちらりと風丸を見ると新商品の物をじっと見ていた。
心なしか食べたそうに見えるような…?




「じゃあ『バナナキャラメル生クリーム』一つお願いします」
『畏まりました。会計は……』



俺は言われた金額を支払い、クレープを受け取った。
立ち食いすると落とすぞど風丸に言われたからベンチに座る。





「うまい!!」
「ハハ、良かったな。円堂が甘いもの食べるの久々に見た気がする」



そうか?と思い返すと確かに買い食いと言えばコンビニの肉まんが多かった気がする。
だろ?と得意気に話す風丸にはい、とクレープを差し出す





「?」
「味見してみろよ!!風丸、これ食って見たかったんだろ?」
「…良くわかったな、流石円堂。じゃ、一口」




俺が差し出したクレープを風丸は頬張り、表情を綻ばせた




「これうまいな!!」
「だろ!!流石風丸、目利きがいいな♪」




その表情に釣られて俺も再び口に入れる。
甘さが口に広がってうまい。





「…あ、円堂、クリームほっぺについた。」
「え!?まじか!!」



慌てて手で擦るがどうやらこっちじゃなかったらしく手にクリームの感触は無かった。
それを見た風丸はクスリと笑った。





「違う、そっちじゃなくて、此処だ。」



そう言った風丸は俺の頬をペロリと一舐めした。
そんな事されて動揺しないわけがない。
何せ此処は人通りの比較的多い商店街の広場だからだ。




「かかかかか風丸っ!!??此処はどこだと…」
「平気さ、皆思い思いに行動してる。俺達がこうしてようが周りは関係ないさ。というか、怒らないんだな今のには」



何して、という事よりも場所をと言った俺。
怒る?確かに普通なら怒る所だよな、と今更気付く。
でも俺は怒るよりも恥ずかしさの方がいっぱいだったから………






「別に怒りはしない。風丸相手だしな」




そう言えば風丸は笑みを深くした。
うわ、毎回思うけどその顔って反則だと思う。
思わず見とれるし…
そう考えてると風丸は



「じゃあこれも怒らないでくれよ…?」



と言ってきた。
何を、と言おうとしたのにそれは叶わず風丸はあろうことか本気で口にキスをしてきた。
一瞬の出来事で事の重大さに気付いたのは風丸の唇が離れてからだった





「〜〜〜っ!!風丸!!」
「済まない、ついしたくなった」
「ついって……」
「嫌だったか?」



言葉を遮った風丸の言葉は驚く位頭の中に入って言った。




「なぁ、円堂」




そう言われたら




「………い、嫌じゃない」


としか言えないじゃないかばかぜまるっ!!
嫌じゃないと答えたのが風丸には嬉しかったようで風丸なニコニコしている。
恥ずかしさとかはないのかと聞きたくなったじゃないか。
全く………清々しいくらいカッコいいなぁその心構え。








「「風丸/円堂には敵わないな」」






何故か俺が白旗を上げたと同時に風丸も白旗を上げた。
何でかは知らないけどまぁ、風丸は満足そうだし、






まぁ、いっか




END
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