一万HIT小説

□こんな先輩嫌すぎる
1ページ/2ページ

 
 


 


 
あ、と俺の目が見つけたのは購買でパンを買ったらしい仁王先輩。
人込みに入って購買戦争をするのが嫌いらしい仁王先輩は予めパンを買ってきてる事が多いみたいだから珍しい。








「仁王先輩、今日は購買なんすね!!」
「まぁの、今日は寝坊したんよ」







メロンパンと野菜ジュースを手にした仁王先輩はやれやれと行った風に肩をすくめた。








「いつも遅刻の仁王先輩がさらに寝坊って…ま、仁王先輩らしいっす。じゃあ俺は先に失礼するっす」
「はい、ではまた部活の時に……あ」
「あ」







帰ろうとした俺に丁寧語を使って、しかも「あ」なんて明らかにミスったみたいな声。







「なんだ、柳生先輩か。柳生先輩が遅刻なんて槍が降りそうっす(笑)」






本気でそう思った俺はついそう言ってしまった。
柳生先輩はお恥ずかしい、と言って苦笑いをした。







「いえ、私だってたまにはうっかりしますよ。
その、切原君…私が仁王君の姿を借りたことは」
「わかってますよ。内緒、っね?」
「はい。お願いしますよ。ではまた放課後に」







俺にしっかり口止めした後に仁王先輩もとい、柳生先輩は教室へと帰って行った。
柳生先輩がうっかりするなんてことはまずないから面白いものを見れた、と俺は満足してパンを片手に教室へ戻った。


















放課後になれば当然部活が始まる。
少しでも早くラケットを握りたい俺は教室を飛び出して部室に向かった。








「あ、仁王先輩」







レギュラーの中では一番早く部室に来たかと思ってたら先に仁王先輩がいてビックリ。
すると仁王先輩は首を振って違うますよ、と言った。





「あ、また柳生先輩っすか?」
「えぇ。ちょっと事情がありまして」
「へーぇ?」







聞けば、三回連続部活をさぼった仁王先輩は今日部活に来ないもしくは遅刻した場合ビンタ+1日ランニングの刑だったらしい。
しかし今日は不幸にも授業をさぼったツケも回ってきて、放課後に英語の補習があるそうだ。







「それって仁王先輩の自業自得じゃん」
「えぇそうですね。しかし私の仁王君が酷い仕打ちを受けるのは見てられませんから」
「はは…そうっスか」








"私の"をかなり強調された物言いに苦笑いしか出て来ない。
柳生先輩と仁王先輩が付き合ってるのは知ってるけど、柳生先輩は仁王先輩にありえない位ゾッコンで見ていて恥ずかしくなるくらいだ。
紳士だかなんだかは分からないが好きな相手にはとことん、てか?








「とりあえず俺は真田副部長には黙ってればいいんすね」
「そうして頂ければ幸いです」








このときの俺は単純に仁王先輩のツケが面白かったとか、柳生先輩のゾッコンぶりを見て楽しかったとしか思わなかった。


おかしいと思ったのは練習の後半。
遅くなりました、と小走りでやってきた柳生先輩だった。
俺は最初、柳生先輩が先に仁王先輩の格好をして部活に来ているから自分は柳生先輩に、かと思ったけど何かが違う。






「柳生か。委員会の仕事を1人でさせてしまってすまなかったな」
「いえ。真田君は部をまとめるのを優先して下さい。
あのくらいなら私だけで充分ですから」







という二人の会話。
この話だと柳生先輩は風紀委員の仕事があるから部活に遅れたことになる。
じゃあ仁王先輩の補習は?







「ん?あれ?」







訳が分からない。
俺はさっきまで共に部活をしていた仁王先輩の方を振り返ってみると仁王先輩はいつもの笑みを浮かべてピヨ、と小さく鳴いた。








「赤也、お前さんはもっと人を疑うことを覚えるべきナリ」
「え?え?」
「なんだ、赤也は仁王を柳生と思ってたのか」





早合点、と柳先輩はクスクスと笑いながらブラックノートに何かを書き込き始めた。







「赤也は柳生の声だと信用する、と」
「仁王君。また私の姿で遊んでいたのですか?いい加減にして下さい」






はぁ、と呆れ声の柳生先輩。
頭がグッチャグチャだ。








「あのー、お昼に購買で会ったのは…」
「それは…私です」
「あ、それは柳生先輩か」「ん?なんじゃ柳生、俺になっとったんか。そう言えばさっき赤也俺の事"また柳生先輩か"とか言っとったな」







ニヒヒ、とイタズラっぽい笑みを浮かべた仁王先輩は柳生の眼鏡を奪い取って掛けてアデュー、と柳生先輩ボイスを出した。








「まぁべつに怒ってるわけではないでしょう?」
「当然ナリ。俺もお前さんの姿借りるしの」







ほのぼのと会話を始めた仁王先輩と柳生先輩に置いてけぼりの俺。
え、何これ。








「赤也、2人には突っ込みは不要だ。部活に戻るぞ」
「あ、はいっす」







どうしようか分からなくなってたら柳先輩が助け船をくれた。
柳先輩の隣に並びながら今日の事をおさらいすると昼に会ったのは仁王先輩の格好をした柳生先輩。
部活に来てすぐに会ったのは仁王先輩の格好をした柳生先輩の振りをした仁王先輩。







「柳生先輩は仁王先輩と付き合い始めてから性格歪んだッス!!」
「ハハハ、まぁ柳生は仁王に似ている所が元からあったしな、それが顕著に表れただけだ」







へぇ〜、と柳先輩の見解に相槌を打ちつつ心に決めた事。






もう二人の事は信頼しない!!



それが叶うことはまだ暫く無理そうだけどな!!




END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ