一万HIT小説

□うわさ
1ページ/2ページ





 

 

 
 
 

最近青学にはちょっと有名になっていることがある。


「ねぇ見た?今日も来てたわよ!!」
「ホント?凄い一途ね」




ちょっとした噂、ともいえようが、それは遅い時間まで部活をしている者なら恐らく全員が知っている事である。




「ホント凄いわね」




―――――氷帝の跡部様って!!









ことは約二週間前に遡る。
かねてより青学テニス部にいる越前リョーマに片想いをしていた跡部がついに暴挙に出た。
帰宅するために校門へ現れた越前をお手持ちの高級車に引き入れ、強奪していったのだ。
そして次の日。
朝帰りした越前はすっかりやつれ、ご丁寧に学校まで送ってくれた跡部は艶々していたのだ。

あぁ、これは………。
青学テニス部は一瞬で理解したくないものを理解してしまったのだった。




「おチビ大丈夫かにゃ〜?」


朝練のプレー中もどこか上の空だった越前。
それに見兼ねたのは手塚だった。
おもむろに携帯を取り出すと、どこかに電話を掛けはじめた。




「青学の手塚だ。」



数コール後に出た人物に名を名乗るや否、



「越前の体調が優れない。速急に迎えに来て、自宅まで送ってやれ」



と命令したのだった。




そして現在、その電話から二週間後。
手塚の電話を承ったのは言わずとも跡部である。
その時の跡部はと言うと、電話から10分程度で手塚の指示通り越前を迎えに上がり、以後毎日迎えに来ているのだった。
これには流石の青学メンバーの呆れた。
どれだけ越前バカなんだと。
しかし、当の越前はあの日以来、特に気にした風もなくその車に乗って、どこかに消えていった。
そんな二人の行き先は誰も知らなかった。








「――――で、今日は何処に連れてかれるの?」
「あぁん?その言い方はまるで俺様が誘拐犯みたいだろーが」
「間違ってないけど?」





高級車の後部座席。
いつも通りの表情を崩さない越前と跡部がそこにはいたが、手はしっかりと重ね合っている。
皆が何かあったと予想している二週間前。
二人は恋人として成立したようなしていないような、という微妙な立ち位置になったのだった。

それからというもの、跡部は越前にこれでもかと尽くしに尽くし、越前も心中密かに心を乱しながらそれを受け入れていた。




「今日はこのままレストランに行くつもりだ。」
「思ったより普通だね。一昨日は寝台特急で北海道まで行ったくせに」
「なんだ不満か?ミシュラン三ツ星を貸し切ったんだが。」
「うわ、えげつない」



さらっと言ってるのが跡部で聞いているのが越前だから許されるものの、一般市民が聞いたら頭がおかしいと思われたに違いない。
事実、常軌を逸してるのだから。


それから他愛のない会話をしながら食事を済ませた二人は、イギリスとアメリカのテーブルマナーの違いに小言を言いながらレストランを後にした。






「ごちそーさま。で、今日はこのまま帰れるんスよね?」



腹が膨れれば必然的に眠くなる。
目を擦った越前は確認とばかりに跡部の顔を確認した―――――瞬間に逃げようとした。
が、ひと呼吸越前の行動を察知した跡部が越前の腕を掴んだ為に越前の逃亡は失敗した。
そして、その越前の表情は赤みが差していた。




「ほぅ、分かってて逃げようとしたのか」
「………分かったから逃げようとしたんじゃん」




越前が逃げようとした理由は跡部の欲情に満ちた表情だった。
その目は狩人よりも鋭く、しかし色っぽさや艶やかさが失われない、見る人を惹き付ける瞳だった。
そしてその目を越前は二週間前に知った。




「もうあれから二週間前だ。そろそろ答えを聞かせて貰おうじゃねーの」




答え、とは二週間前に越前から出した問い掛けである。
青学メンバーが察した通り、2人は性を交えた。
それも、どちらかと言えば跡部の一方的に近い形で。
その行為を終えた後、越前はここまでしたなら誠意はあるのだろう、ならそれを見せて欲しい、と言った。
そしてこの二週間、跡部は言われた通りに誠意を見せたのだった。


越前が欲しがる物は全て買い、朝はモーニングコール、帰りはショッピングやテニスの相手、そして送り。
別れ際には手の甲へのキスも忘れずに。
恋人としては申し分ないほど跡部は尽くしたのだった。

そして今日、遂に跡部は答えを聞く事にしたのだった。




「俺様と付き合う気はあるのか。あるなら俺様の手を取って車に戻れ。ないなら手を取らずに車に戻れ。その場合は普通に家に送るし後は何も手出しをしない。」
「相変わらず高飛車な物言い…じゃあ手を取ったら?」
「俺様の部屋に行き、抱かれる」
「!!」



なんという究極の選択。
越前は絶句した。
抱かれるか、今までの関係に戻るか。
跡部の優しさや愛の深さを知った越前に後者は選べなかった。




「ホントあんたって我が儘な人なんスね。」



越前はクスリと笑うと跡部の腕を掴んで車内に引きずり込んだ。
それからその勢いに任せ、強引に唇を奪ったのだった。




「後悔しても知らないからね」
「ハッ、そりゃこっちのセリフだろーが。後から泣いたって離してやらねぇからな。」





越前、愛してるぜ







青学にはちょっとした噂がある。




「ねぇしってる?」




――――――氷帝の跡部様、ついに恋が叶ったんだって!
しかも、お相手はあの――――……




テニスの王子様だって!





END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ