一万HIT小説

□バカは死んでも治らない
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剣城と松風が付き合ってるとサッカー部のメンバーが知ったのはホーリーロードが終わった直後。
「え?結構前からだけど…言ってませんでした?」と、松風はおかしいなというようにキョトンとしていたので、突然の衝撃発言にキョトンとしたのはこっちだ!とは誰一人言わなかった。
剣城はというとその場にいはいるが、我関せずとばかりにそっぽを向き、話に一切入ってこようとはしなかった。
そしてしばらく松風の惚気話を聞いていた部員だったが



そして帰り道。



「ねー剣城、手繋ぎたいな♪」
「………」
「ふふっ、ありがとう」




松風と剣城はさも当然というように2人で帰路についていた。
突然の松風の申し出に剣城は何も言っていない。
しかし無言は肯定、松風は有無言わずに手を拝借して繋いだ。
怒られるかな、と顔色を伺った松風は、その表情に怒りがないと確認し、再び前の道へと視線を戻した。



「オイ松風」
「なにー?」




目線は真っ直ぐ前。
剣城はおもむろに松風を呼んだ。
返事をし、呼ばれた松風は剣城の顔を覗き込んだ。




「お前さ、あぁやって人前で俺の事話すの止めろよ」



ぼそり。
小さな声で剣城はそう言った。




「なんで?」




その問いかけに松風は間髪入れずに疑問を口にした。
松風からすれば剣城と付き合ってるということは自慢であり誇りである。
なぜ話してはいけないのか、松風には分からなかった。




「なんでって…それはあれだ…」
「あれって?」



後に引き下がるということを松風は知らない。
口籠もる剣城を余所に松風はじいっと剣城を見つめた。



「……………」
「…………………………………………………分かったよ言えばいいんだろ言えば!」




松風の無言視線攻撃に負けを認めた剣城は、大きなため息をついてからやや大きな声で叫んだ。
是の解答に松風が喜んでぱぁ、と笑顔になったのは言うまでもない。
で?で?と続きを促す松風に呆れつつも剣城は口を開いてくれた。








「なのな、ああいう話をされると…その、……恥ずかしいんだよ!!分かれよばか野郎!!」





ギュゥウ、と繋いでいた手に圧力がかかった。
無論、剣城が松風の手を思い切り握ったからによるもので、松風は顔を一瞬顰めたが、直後にはすぐふにゃぁっとした締まりのない笑顔を浮かべた。
幸せを存分にばらまいたような表情に加え、「剣城かわい〜」と言われてしまい、剣城の表情が赤くならない訳が無かった。















「つーるーぎー、ねーってばーこっち向いてよー」
「絶対に嫌だね」




顔が赤くなった剣城はレアだからもっといっぱい色んな人に話そっかな、と松風が発言し、繋いでいた手を離され殴られてから数分。
剣城は一切こっちを向いてくれなくなってしまった。
すっかり不貞腐れてしまった剣城は松風が何度声をかけても返事をしようとしなかった。
しばらくして返事を待つことを諦めた松風はとぼとぼと剣城の隣をキープしつつ黙り込んだ。

チラリと剣城が松風の事を見たとは気付かずに。






「天馬」




不意に剣城が松風を呼んだ。
呼び掛けに答えるように顔を上げると、一緒に歩いていた最中初めて目が合った。




「あんまり大っぴらに話を振り回さないなら、許してやる。」
「うん約束する!ありがと剣城!」




恥ずかしさの基準は何処なのか、公道で腕に抱き付いてくる事に剣城は怒らない。
それを良いことに松風は自宅に着くまで腕を離さなかった。





「ありがと剣城。また明日ね♪」




玄関まで送って貰ってお礼を述べた松風。
じゃあな、と踵を返した剣城の腕を松風は掴んだ。



「?…っ、」




振り返った剣城の視界は急に暗くなった。
一瞬で明るくなると松風の笑顔が真っ正面に映った。
剣城が松風にキスされたと分かったのは一呼吸後。
流石というべきか、キスされたと分かった途端に軽やかなステップで後ろに跳び退き、松風との距離をとった。




「おま、」




誰が見てるかも分からないのに、と非難を込めて睨むと、眉を下げながら微笑みを浮かべた。




「ごめん剣城。でも今したくなったんだ。ほら俺って剣城バカだから」



えへへ、と笑う松風に剣城は怒るということを忘れてしまった。




「今度こそ帰る」




そう言って松風に背を向けた剣城を松風は今度は止めなかった。




「じゃあね剣城また明日」



それを手を振って見送った松風は、さぁ夕ご飯とばかりにドアをおもいっきり開けて、ただいまー!!と叫んだ。








「……たく、キスなら2人きりの時にたくさんしてくれりゃぁいいのに…」



そんなこと、本人には絶対に言ってやらねぇけどな。




END
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