イナズマイレブン

□A Weak Person
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風丸君は僕と晴矢の間に立つと、僕を隠すようにして晴矢を睨んだ。

「………何の用だ…」

風丸君の後ろから覗くと、風丸君はいままで見たことない位真剣で、恐い顔をしていた。晴矢は鼻で笑いっているけど、同じように真剣な顔だった。

「お前らに用があるんだよ、イナズマジャパンに負けた韓国代表の一員としても、ヒロトの元彼としても」

「俺等はお前なんかに用はない。さっさと失せろ」

「俺が用があるんだよ!!」

晴矢は風丸君の胸ぐらを掴むと、叫ぶように、嘆くように矢継ぎ早に言った。

「風丸、てめえ弱いんだよ!!負けた俺が言えるわけじゃないけどよぉ、ジ・エンパイア戦何てめえ怪我して途中で抜けてんだよ!!結局全部ヒロトに押し付けてんだよ!!ヒロトは円堂がいないだけでも不安なんだよ!お前らが思っているほど強い人間じゃないんだよ!!それなのに、それなのにっっ!!!」

晴矢は目尻に涙を浮かべながら、それなのに、それなのに…と悲痛な叫びを繰り返した。風丸君は晴矢の胸ぐらを掴み、静かな声で言い返した。

「…確かに俺は弱いさ、怪我して、ベンチに戻って、座っているだけだった…俺はまた、弱いってことを思い知らせたよ…ただ!!何にもできなくても、傍にいることはできる…!!弱い俺にはそれしかできないっ……」

二人とも泣きながら睨み合っていた。

「…晴矢ぁ……風丸君っ………もおいいよっ……………風丸君は弱くなんかないっ…ジ・エンパイアに負けたのは…、本当に弱いのは、僕なのに…ずっと、守られて、前にいるようでずっとこうやって、皆の後ろで隠れている僕なのにっ……!!!」

もう目から溢れる涙で世界は歪んで、何が弱くて、何が強いかなんて分からなくなった。

(もう何にも分からない…)


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