陰陽師にお願い!

□無題
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俺が玄氏の境遇を知ったのはあの日から一ヶ月も漸く過ぎて取り敢えず知り合い程度には昇格した後だし、あいつが俺の事情を知ったのはおそらく俺とあいつが出会うより前だったのだろうと思う。
わけもわからないまま二度目の転機、それは後から思い返してあああれが分岐路だったのだと気付く程唐突かつ云ってしまえばその場に流されたものだったがまぁとにかく、そいつを迎えた状況が状況だったのだから玄氏が俺についてどの程度の知識を持っていたかなんて興味はなかった。
脚色し放題のドキュメント辺りに持ち込めばお茶の間に華を添えただろうストーリーも、俺にとっては寝て起きて顔を洗う行為と同軸同次元延長上に存在していたのだから。
寧ろそういう意味で俺が自分の十数年に興味を持ったのは、あいつの話を知ってからだった。

捨て子。
親の顔も覚えていないと云う、それが俺と比べて幸せか不幸せかという感慨はあまりなかった。
ただ、その親を映さない黒い瞳に、

同情している。
同調している。

歪な相似形を描くこの境遇に。



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