陰陽師にお願い!

□Trick or Treat...
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「琥珀、今日は何の日か覚えてますよね?」
常務を終え、自室に帰った琥珀の元に来客があったのは九時を回った頃。

「さぁ、何の日だったか…」
視線を巡らす琥珀だが、忘れる筈がなかった。
もとより破天荒な女社長の片腕として働く身、スケジュールの微に入るところまで綿密に叩き込まれている。
ましてや世界的に有名な行事を失念するわけがなかった。
…それすら、朱也の思惑の内なのかもしれない。
ハロウィン。
「やーですね、琥珀ってば年ですか?こんな有名な日を忘れちゃうなんて」
言葉はやゆする響きだが、少女めいた微笑みは念を押すような鋭さを纏っている。
いわく、『忘れてるわけないですよね?』。
副音声。

常の朱也は、この種の行事ならばそれに乗じて琥珀に無理難題を吹っかけていた。
年代物の飾り皿、それを収納するスペース。
そういったものをせびるのに絶好の機会が、朱也にとってのそれだった。
だが、今日だけは違う。



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