陰陽師にお願い!

□Trick or Treat...
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今日だけは、琥珀がせがまなければならない。
朱也が勝手に押し付けることも出来ようが、それで彼が満足するわけがなかった。
琥珀が、自らの意志で、朱也に『それ』を求めなければならない。
「とぼけてるんですか、琥珀?」
後ろ手に準備は万端、後は琥珀がただ一言、云えばいいのだ。
例えば明日、珍しい体調不良で会社を欠席することになっても。
それで朱也のご機嫌がとれるのならば。
琥珀は観念するように向き直り、悲壮な覚悟で微笑んだ。

朱也の趣味、お菓子作り。
ただし、壊滅的。

「……トリック・オア・トリート…?」










「トリック・オア・トリート!」

すぱぁん、と襖の開く音が夜も深まり始めた庭に響く。
神谷邸は居間で問題集と睨み合っていた玄氏は、珍妙なテンションで飛び込んできた一青にここぞとばかりの怪訝な顔を向けた。


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