陰陽師にお願い!

□Trick or Treat...
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「…何それ?」
「……はい?」
「だから何だよ。メシは片付けちまったぞ?」
食事に来たのかと問う玄氏にとぼけている様子はない。
一青は昨年の冬を思い出しながら、そこはかとない危惧を口にした。
「玄氏…ハロウィンて知ってるか?」
「ナニソレ」
「やっぱり…」

多忙な師のせいか、昨年までこの日本でクリスマスを知らなかった少年だ。
日本においては若干知名度の下がるこの行事を知らないのも、不思議でないといえばない。
料理を始めとする家事には秀でた玄氏だが、一青の期待は些か大きすぎたらしかった。
「で、なんなんだよそれ?」
とりあえず居間に入った一青は、宿題の手を止めた玄氏の脇に来る。
いつになく真剣な一青に、自然と少年の背筋も伸びた。

ハロウィン、子供の仮装、お菓子作り。
知らない風習に興味を示す玄氏の表情は、本人に云えば拗ねたように明後日の方を向くのだろうが…年相応、寧ろ幼ささえ感じさせる。
高校生というには、玄氏はあまりにも知らないものが多過ぎる。



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