裏。

□トリプル・トライアングラー
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どうしてとか、なんでだとか、そんな言葉には意味が附随しないことを理解したはずの脳は、熱やら快楽やらに揺さぶられてぐずぐずに溶けてしまった。だからなのか、口の端々から零れる言葉にならない声の合間に譫言のようなどうしてや、なんでがほろほろと落ちる。


「ひっ、んん…あぁあッ!や、なん、で…!」

「なんでて言われてもなあー…」
「ははは、顔ぐっちゃぐちゃやん。気持ちええて堪らんて顔してはるで」
「柔兄も金兄もあんまいじめたらんといてよ、」


奥村くんのトラウマになったらどないするん?なんて、咎めているのは口だけで、その顔は楽しそうににたにたと歪んでいる。思わず怒鳴ろうとすれば見計らったように奥を突かれて、罵声の代わりにあられもない声が飛び出た。振り返ると目が合った金造がにやりと笑う。悪戯が成功した子供のような、だけどそんな可愛いものじゃない獣のような笑みだった。意図せずに後孔が収縮するのがわかり、聞きたくもない声がこれ以上漏れないようにと唇を噛めば、こらこらと無遠慮に骨ばった指が二本入ってきた。


「うあ、ふ…っ、ああっあっひやうッ!」
「噛んだらあかん、傷になってまうやろ」
「ンン、ん、あうっ」


そう言って口の中をかき混ぜると、たっぷりと唾液で濡れた指を引き抜いて舐める柔造に頬が熱くなる。その大人の色気に当てられて更に締まる後孔に耐えきれず、さんざん媚肉を抉っていた金造が苦しげに吐息を漏らし、ぐっぐと前立腺を強く突く。一瞬息が止まり、そして悲鳴じみた嬌声を上げて燐は達してしまった。辛うじて身体を支えていた腕から力が抜け、四つん這いで腰だけを高く上げた淫らな格好になってしまう。荒い息を繰り返し、びくびくと細かく痙攣する燐の太ももと尻に熱い飛沫がかかった。ほんまは中出ししたかってんけど、と不満にも似た言葉を吐きながら金造は後ろから退く。


「はっ、はっ、」
「お疲れのとこ悪いけど、次は俺の番やで奥村くん」
「も、やだ…っ、ゆるして…っ」
「嫌やなあ、なんか俺らがひどいことしとるみたいやん、それ」


いつもと変わらないへらへらとした笑顔で廉造はそう言うと、燐の身体を軽々と持ち上げて胡座をかいた自分の上に座らせた。指一本動かすことも出来ない燐はなんの抵抗なく、再び胎内へとそそり立った男の一物を迎えることとなる。射精したばかりだと言うのに気遣いのかけらもない急な挿入に、爪先どころか尻尾まで伸ばして声もなく廉造の肩に倒れ込む。呼吸もままならない。それでもはくはくと必死に空気を取り込んでいると、柔造から優しく口づけされる。人工呼吸と言うには欲を孕んだそれは、けれども燐の息を整えるには十分だった。


「人にトラウマ植えつけんなって言う割に、お前も無茶しよるやないか」
「好きな子のこんな姿見て冷静でいられるわけない、やんッ」
「ふ…っん、あ…あああっ!」


キスを止めさせるように律動が始まる。柔造の苦笑が涙でぼやけた。背後から攻められたときとはまた違った快感が身体を支配する。常日頃鈍いと言われている燐でもこの状況が異常であるというのはすぐにわかった。友達の家に泊まりに来ただけなのに、どうして友達とその兄二人に自分の身体を好き勝手弄られなければならないのか。理解の外にある答えを考えていると、廉造が「他のこと考えたらあかんえー」と真剣な声で囁いた。そして燐の腰をしっかり掴むと、激しく突きながら乳首に齧りつく。更に金造からは尻尾を愛撫され、なけなしの理性を絡め取られていく。


「あっああっああん!」
「気持ちいい?」
「ひぅ、んッ!はあ…っ、あうっ!やあ、んんん!イく…!」
「イってもええけど、次は柔兄やで」
「ふあッ!ん、ああっあっ!」


のけ反ってびゅくびゅくと精を吐き出す燐につられ、廉造もまた熱い胎内に勢い良く精を注ぐ。堪らないと言うように真っ白な喉元に歯を立てれば、ぬるついた腸がぎゅうと収縮した。力なく凭れかかった華奢な身体は手離すには名残惜しいが、背後から前へと移動した兄に渡す。焦点を失い蕩けた青い瞳が宙を彷徨う。可哀想に、本人はただ友達の家に遊びに来ただけのつもりなのに、その友達にこうやってあまり面識のない兄二人と一緒になって犯されるだなんて思ってもみなかっただろう。半開きの唇から垂れたよだれを舌で舐めとる。


「奥村くん、しっかりしい」
「せやでー。柔兄の半端なくでかいからなあ」
「ちゅうか、いつ見てもグロいな柔兄の」
「…おん」


他人事のような言葉に意識が浮上したのか、何度か瞬きをする燐の脚を柔造が左右に大きく広げた。白濁に汚された秘部が三人の目に曝される。たくさん擦られて赤く熟れたそこはまだ足りないのか、少し捲れてぱくぱくと開閉を繰り返していた。ごくり、息を飲んだのは誰だったか。柔造は弟達にグロテスクと言わしめた自身へ後孔を宛がい、ゆっくりと燐の身体を降ろした。両肩が跳ね、口からは喘ぎが零れる。


「アッ、あああっ、やうっ!ひん!でか…っ、くるし…んんあッ!」
「奥村くんのナカ、ぎゅうぎゅう締めつけて食いちぎられそうや…」
「うお、すご…」
「えっろ…」
「ふゃ…っ!や、みな、で…っ!ひいっ!」


自分のときでさえきつく締めつけていた後孔が健気に柔造を飲み込み、ひくついているのを見て思わず声を上げた二人の視線から逃れるように身体をよじる燐だが、それが返って快楽を拾うことになり嬌声が溢れる。それに気を良くしたのか、それとも耐えきれなくなったのか柔造が燐の腰を上下に動かし始めた。


「あっ、あっ、ああっひあっんんあッはあっあんッ!」
「かわええなあ…」
「ぅんっ、あああっやうッ!」


頭を振って快楽をやり過ごそうとする燐の耳元で囁けば、ひいひいと涙を零しながら喘ぎ続ける。奥を突かれる度に前に倒れそうな身体を見かねて廉造が手を伸ばそうとしたら、一足早く隣から金造がちょっかいを出した。可愛らしい燐の痴態に我慢が出来なくなったのだろう。ぷるぷると震える燐を擦り上げる。いっそう高くなる啼き声に柔造の顔が歪んだ。


「おまっ、金造悪さすな…!」
「柔兄ばっかずっこいねん」
「ひ、いあぁあっ!まっ、んやっ!あっああんッ!」


言外にさっさとイけと伝えるように、手の動きを早める金造に「後で覚えときや…」とだけ吐き捨てると、自分も下から突いてラストスパートをかける。燐の嬌声が響き渡る。少し遠くからそれを見ていた廉造も、ちょっかいを出す金造と一緒になって燐の乳首を摘まんだ。美しい青に潜む赤い瞳孔が大きくなり、絶叫のような喘ぎと共に燐は達してしまった。射精と連動して収縮する後孔に苦しげな息を漏らすと、柔造は白く濁った欲望を最奥に吐き出した。しかし余韻に浸る間もなく、胎内から自身を抜くと燐を仰向けに倒す。


「ふ…あっ」
「さて、奥村くん」


朦朧とした意識の中、髪色だけが違う同じ顔がみっつ、これまた似たような笑みを浮かべて燐を覗き込む。どくり、心臓が軋む。どろどろとしたたくさんの液体で濡れた身体は、それでも不快だと思えなかった。正常な思考は既に溶けて、涙と一緒に流れてしまったのだろうか。


『どの志摩が好き?』


意識は重く沈む。三重する問いかけに、燐はゆっくりと口を開いた。


「選べるか、ばか…」











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