版権2

□頂きました
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Fさんより。





ラクサスとナツは決して良いと言える仲ではなかった。が、不思議なことに通信用魔水晶で毎日会話はしていた。
わざわざ魔水晶で会話をするようになったのは、幼少期にナツがクエストに失敗し一度、大怪我を負ったことがきっかけだった。

ギルドに運ばれたナツのお見舞いとしてマカロフやミラジェーン、グレイ…他にも沢山の仲間が心配して何度も様子を見ていた。
ナツはポーリュシカのお陰で一命をとりとめた。


「大丈夫か、ナツ」
「大丈夫だ」
「それじゃあまたな、クエストあるから」
「おう」

仲間との会話はこれだけで、あまり進展しなかった。

夜、ギルドは活動を停止する。ギルドを照らす明かりは、すべて消える。鍵もきっちりつけられる。ただナツはその時、大怪我をしていてまだ動けない状態だったので、傷がある程度癒えるまでギルドの中で寝泊まりさせられていた。


「…静かだな」


ナツは呟く。誰もいない部屋に一人だけ。イグニールがいたら寂しくないのに、と思ってしまう。
布団を手繰り寄せて丸くなる。


「おい、ナツ」
「ラクサス…!?」


何故かラクサスが突然部屋に来て、ナツに近づいく。そして片手をナツの目の前で差し出した。ラクサスの掌には少し小さめの通信用魔水晶があった。
短く、これをやる。とだけ言い、彼は部屋の扉から出て行った。


「……?」


受け取った魔水晶を見つめるとナツは微笑んで眠りについた。
次の日の夜から、ラクサスとナツは魔水晶を通じて会話を交わし出した。
グレイ達には、知人から貰った魔水晶だ、と秘密にした。
それからナツが寂しく思わないようにラクサスは通信をした。
ラクサスは素直になれなかった。怪我をしたから心配をする、怪我したからお見舞いだ。当たり前が出来ないのなら、と考えたのが通信用魔水晶だった。
ナツが一人でいることを好まないとラクサスは知っていた。まだ幼いナツは夜一人で眠るのも寂しく思うはずだ。―――まだまだ餓鬼だ

だから魔水晶を渡したのだった。
二人の通信会話はナツの怪我が完治するまで続いた。
そして現在も続いている。


「ラクサス」
「なんだ、寂しいのか?」
「大丈夫だ。…おやすみ」
「……あぁ」


(今日もいい夢見れそうだ)











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