10/30の日記

19:44
うじは激怒した。
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かならず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の 母 を除かねばならぬと決意した。うじには政治がわからぬ。うじは、アニメ好きである。漫画を読みあさり、アニメ中毒になり、薔薇の世界を妄想しながら暮して来た。けれども、新作アニメに対しては、人一倍に敏感であった。(――中 略――)  妹は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。


「明日の、日曜の朝になると、居間から、神々の声が聞こえます。」
「なぜ、聞こえる。」
「なぜと言われましても、わたくしは寝惚けております故、正しき答えを持ち合わせておりませぬ。しかし、確かに、聞こえてくるのでございます。」
「声の主はわかるのか。」
「はい、あるときはおりりんの声が。また、あみっけが。そして、 めぐぅ、のん子さん、雪野どの、大川のまっすーさまのお声が。」
「たぎってきた。私は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。しかし、そのアニメがわからぬ、ということです。この頃は、実習や就職活動やらで、友が先行く姿を見、ご自分の将来をお疑いになり、いとこをご覧になられても、どうにもショタロリ度数が足りないと思っておられる。」


聞いて、うじは激怒した。


「呆れた虫(わたくし)だ、生かして置けぬ。」


うじは、単純な虫野郎であった。ピカチューの目覚まし時計をかけ、携帯のアラームをセットしたままで、羊を数え始めた。たちまち彼女は、妄執の果て(夢の中)へと辿り着いた。あられもない燐で自身を慰めていた。しばらくして、うじは眠りから覚め、目覚まし時計に手を伸ばした。時刻は八時三七分ちょっと過ぎであった。慌ててベッドから落ち、部屋から出ると、うじは寝起きの母に質問をされた。


「きさまは朝方からナニをする気だ。言え!」


母(睡眠三時間低血圧)は静かに、けれども威厳を以て問い詰めた。その母の顔は赤みがあまりなく、眉間や額の皺は、刻み込まれたように深かった。「居間へと赴き、神々の声の正体を見破るのだ。」と、うじは悪びれずに答えた。


「お前がか?」


母は、憫笑した。


「仕方のない奴じゃ。神々がなんたるかを知らぬお前には、正体なぞ暴けぬ。」
「言うな!」


うじは、いきり立って反駁した。


「早朝からアニメを見ることは、腐女子である者にとって、最も誇るべきことだ。母は、漫画や小説といった静の媒体を狂信しすぎておられる。」
「漫画こそ妄想の源であり、神々の姿なのだと、わしに教えてくれたのは、ポーの一族だ。アニメは、腐女子に対する媚にならない。人間は、もともと自発性に富んだ妄想のかたまりさ。信じては、ならぬ。」


母は落ち着いて呟き、ほっと溜息をついた。


「わしだって、うる星やつら、タッチ、エースを狙え、アタックNo.1は心の友だし、今も新作アニメはチェックしておるのだが。」
「今どきの声優十人も知らずにアニメを語るか。自分の腐女子歴を自慢するためか。」


今度はうじが嘲笑した。


「黙れ、幼虫の者。」


母は、さっと携帯を取り出し報いた。


「口では、どんなことでも言える。わしには、娘の性癖の奥底が見え透いてならぬ。お前だって、今に青少年健全育成条例が福岡に手を伸ばして、わしに同人誌を買ってくれと泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
「ああ、母は賢い。自惚れているがよい。私は、ちゃんと条例の手が及ぶことも覚悟した上で、同人誌も否定はしない。ただ――」


と言いかけて、うじは足元に視線を落とし瞬時ためらい、そして息を漏らした。


「ただ、萌えを期待しているのなら、二度寝をするまでに三十分の時限を与えてください。私に、未知なるアニメの正体を教えてやりたいのです。三十分のうちに、否、十秒もあれば私は作画や声優を覚え、かならず、アニメのタイトルを暴いてみせましょう。」


「馬鹿な。」と母は、祖母の言い間違いを指摘するときなどに出る裏返った声で低く笑った。


「とんでもない嘘を言うわい。十秒でアニメを把握出来ると言うのか。」
「そうです。わかるのです。」


うじは必死で言い張った。


「私は約束を守ります。私に、十秒だけアニメを見る猶予をお与えください。居間の地デジ対応テレビがつきっぱなしなのです。そんなに私を信じられないならば、よろしい、お前の部屋に置きっぱなしの幸せの贅沢アロエヨーグルトがある。昨夜食そうと思ったが手をつけなかった未開封のものだ。あれを、人質として冷蔵庫にしまおう。十秒経っても、アニメのタイトルがわからなければ、どうぞ胃にお納め下さい。頼む、そうして下さい。」


それを聞い母は、残虐な気持ちで、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせタイトルなぞわからないに決まっている。この嘘つきに騙されたふりをして、居間に赴くのも面白い。そうして幸せの贅沢アロエヨーグルトを眼前で食してやるのも気味がいい。


「願いを、聞いた。幸せの贅沢アロエヨーグルトは預かっておく。十秒後にも同じようにアニメを見続けるがよい。即座に答えられぬのならば、幸せの贅沢アロエヨーグルトを、きっと食うぞ。」


そうして二人で居間に足を運び、地デジ対応テレビに目を向けた瞬間。うじと母は、震撼した。



そう、一人きりで祖父がテレビを―――スイートプリキュアを観賞していたのである。





あまりにも暇だったので走れ○ロス的に日記を書いてみた。幸せの贅沢アロエヨーグルトはうまいぜ。ちなみにこのあと祖父はトリコまで観賞して畑仕事に赴いたのである。そういやお嫁さまに実習から帰ってきたぜ報告してないや…拍手しに行こう。あと家族(母)の生態についてレポートにまとめて提出するって言ってたから日記に書いてURL送りつけてやる。あ、あと試験受ける園を漸く決めましたので本格的に就活モードす。さてさて見学しに行ったり履歴書書いたり面接や論文やピアノの練習したりせねばな…!









☆コメント☆
[神崎] 10-31 20:01 削除
こう、どう言うて良いのか分かりませんが、なんだか面白かったです←
ほんと小説読んでる感じだったよー!笑
私もその、幸せの贅沢好きです(^ω^)

[うじ。] 10-31 20:25 削除

神崎さんへ!

お久しぶりすー^^
日記もおサボりしてたから、なんとも言えない面白さを追求することにしたんでふ
小説みたいとかどんな褒め言葉www

幸せの贅沢〜はまじうまいよね!
ちなみにわたくしのセリヌンティウスは母に食されちったよう!

[Jun06] 11-01 03:33 削除
最初タイトル見た時、ナニゴト!?とびっくりしました(笑)
いったいぜんたい何故に激怒かと思いました!
そして吹き出したという。
走れメロス。久々に読もうと思いましたまる
「走れうじ姉さん」書籍化お待ちしてます。
(笑いの)涙をありがとう。

[うじ。] 11-01 16:37 削除

じゅんじゅんへ!

おす!自分でも何に激怒したのかさっぱりなんだぜ!
多分…隣の部屋の母が夜中に立てる騒音かな…?

書籍化てwww しないよwww パクりじゃねえかwww
つーか私は走るの嫌いだから出すとしたら「這いずれ幼虫」かなあ?←

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