高杉×土方

□壊したい壊したい、壊せない。
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目を覚ますと、ぼんやりと1人の人間の輪郭が映し出された。


「気分は…どうだ?」


―ああ、この優しい光は近藤さんだ。


頬を撫でるその手があたたかい。


「ん…大丈夫…だ。」


そう答えて身体を動かそうとしたが、動かない。


目を凝らすと、手足が鎖でベッドに縛りつけられていた。


―あれ…何かおかしい…。


ぼやけていた視界が徐々に鮮明になっていき、俺の目に映ったのは…


「高杉…晋助…?」


名前を呼ばれた男は静かに微笑むと、頬を撫でていた手をそっと離した。


なんだろう?鬼兵隊のボスはもっと凶悪で残忍な奴だと思っていたのに…


向けられた笑みははかなげで、どこか寂しそうで。


敵なのだから、身体中を拘束する鎖をひきちぎってでも斬らなきゃならないのに…


何故かそんな気は全くおこらなかった。


「やっと…お前に会えるんだな…。」


何を言っているのだろう…


もう既に会ってるじゃないか。


「俺を…改造人間にでも…する気か…?」


頭に複数の管がつながれているのがわかって、思わず笑ってしまった。


「そんなこと…しねぇよ。そんなことは…絶対に。」


…ああ、思い出した。


確か俺、見回りの時に高杉と接触して、やり合って…


斬られたんじゃなかったか…?


何で生きてるんだろう?


「傷…つけちまったな、右腕に。」


視線を落とすと、確かにそこには包帯が巻かれていた。


「腹…痛くねぇか?」


そうだ…殺られると思った瞬間、刀の柄で鳩尾を突かれて…


それで意識を手放したんだ。


「なんで…殺さなかった…?公開処刑か…何かにでも、するつもり…か?」


「…いっそ、そうできたらどんなに楽だったろうな。」


「え…どういうことだ…?」


意味がわからず高杉を見上げると、奴の手で両目を覆われて…


そして悪態をつく間もなく、唇に柔らかい感触が降りてきた。


次に視界が明るくなった時には、両目を覆われる前と変わらぬ光景が広がっていた。


「土方、次お前が目覚めた時は…約束、果たしてくれよな?」


―そんなモノ、お前とした覚えはないと口を開こうとしたのに、


「あ…くッ、アアアアア!!」


頭に繋がれた管から強烈な痛みが襲ってきて…


脳内が電気ショックを受けたかのように痺れて。


あまりの衝撃に俺の意識は遠くなり…


再び暗闇へといざなわれていった。
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