高杉×土方

□先生、これが…恋なのか?・U ※R18
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(1)自分は昔から何故か男に好かれる人種だった。

それゆえに、他人には言いたくもないような経験を結構してきた。

まず最初の言いたくもないような体験をしたのは、幼稚園の時だった。

友達と公園で遊んでいた時に知らないオヤジに声を掛けられ、危うく誘拐される所だった。

多分マヨを引き合いに出されていたら、ついて行ってしまっていただろう。

次の体験は小学校2年生の時だった。

通っていた習字塾の先生の息子(高校生くらいだった)に言い寄られ、いきなりズボンを下げられそうになって慌てて股間を蹴り飛ばした記憶がある。

勿論次の日にはその習字塾は辞めさせてもらった。

その他にも、友達だと思っていた奴に告られたり、電車で痴漢に合ったり。

それなりにピンチではあったのだが、何とか切り抜けて生きていく事は出来た。

しかし…

中学に入学して間もなく、事件は起きた。

それは新しく出来た友達と話し込んでいて帰りが遅くなった日の事。

お腹がすいて仕方なかった俺は近道を通って帰ることにした。

その道は人通りが少ない為夜はあまり通らないことにしていたのだが、お腹がペコペコ過ぎてそんな事を考えている余裕はなかったんだ。

そして…そういう時に限って変質者という輩は現れるモノで。

俺は刃物とバットを持った2人組の男に挟み打ちにされてしまったんだ。

逃げ道を失ってどうする事も出来なくなってしまった俺は、男達の言う事を聞かざるを得ない状態に追い込まれていた。

両腕をロープで縛られ口にガムテープを貼られ、ベルトを外されて。

もう駄目だと眼を瞑った…

その時だった。



『オジさん達、何やってんの?』



突然した声に眼を開けると、俺と同じ学校の制服を着た男が立っていた。

そして…俺を手込めにしようとした男達をいとも簡単に倒してしまったんだ。

その身のこなしに俺は自分の置かれている状況も忘れて見入ってしまっていた。



警察に2人の男達を突き出した後、俺を助けてくれた男は家まで俺を送ってくれた。

その時はテンパッてしまっていて名前を聞くのを忘れてしまったが…

翌日に行われた部活動入部説明会で、その人の名前を知ったんだ。



‘柔道部主将・坂田銀時’



小学生までサッカーをしていたからサッカー部に入る気満々だったのだが、その男を見て俺は迷わず柔道部に入部した。

入部してからというもの、坂田先輩は俺の事を特に可愛がってくれた。

俺もあの事件以来この男に絶大な信頼を置いていたから、それが嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。



夏の大会が終わって引退してからも坂田先輩は時々部活に顔を出してくれた。

同期だけでなく後輩からも好かれていたこの人は近付く事ですら大変だったけれど、それでも必ず俺には話し掛けてくれたんだ。

しかも、

『俺、彼女にすんなら土方君みたいな子がいいなァ』

なんて言われた日には、冗談だとわかっていても嬉しくて。

…気付くと俺はこの男に恋してしまっていたんだ。



3年生が卒業してからも俺は坂田先輩の事をどうしても忘れる事が出来なかった。

それゆえに彼との唯一の接点である柔道にどんどんのめり込んでいった。

大きな大会があると必ず観に来てくれると知っていたから、そこで勝って褒められたい一心で俺はメキメキ腕を上げていった。

そして中学最後の大会では全国で準優勝という快挙を成し遂げる事が出来た。

その時坂田先輩も応援に来てくれていて、一緒に…まるで自分の事のように喜んでくれたんだ。

『高校で待ってるから、また一緒に柔道やろうな』

こう言ってくれた時は本当に幸せで。

俺は晴れて坂田先輩と同じ高校に入学し、柔道部に入ったんだ。



けれど…



そこには坂田先輩の姿はなかった。

部長に尋ねると、ちょうど俺が受験で忙しかった頃に、事故にあったと教えられた。

飲酒運転していた車にはねられ、命に別状はなかったものの、膝をやられたらしくて。

そのせいで柔道を続けられなくなり、退部した、との事だった。

ショックとしか言いようがなかった。

柔道を心から愛していた先輩が、そんなめにあうなんて…。

自分には何も出来ないという事は百も承知だったけれど、いてもたってもいられなくて、俺は休みの日に先輩の家を尋ねた。

中学の時部活終わりで一緒に帰る事があり、その時に坂田先輩の家におじゃました事があったから場所は知っていた。


でも、そこで…

予想だにしていなかった出来事が俺を待っていたんだ。
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