短編集
□君が見た花は
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「可哀想だね」
いつの間にか足を止めていた彼女は何かを眺めていた。
何が可哀想なの?と問いかけると彼女は黙って指を指す。
なんとなくその先を見れば枯れかけの花が咲いていた。
あ…。と声だけが漏れ、一歩後ずさる僕。
「…君はまだ色んな世界が見れた筈なのにね」
彼女はその花がまるで自分と同じ生き物のように扱っていた。
何故そんな扱いをしているのか僕には分からない。
昔から彼女は人と変わっている所があったから…多分そのせい。
「苦しかったよね。辛かったよね。」
それよりも早く君に伝えたい事があるんだ。
「ゴメンね…ゴメンね…」
なんでないてるの?
そんな枯れた花なんてどこにでもあるじゃないか。
ねぇ…早く僕を見てよ。
「ゴメンなさいっ─…」
ねえってば!!
俯く彼女を無理矢理立たせ彼女が見ていた花を見下ろし、蹴り上げた。
何度も、何度も、何度も。
なのに彼女は黙って僕を見つめながら静かに涙をこぼしていた。
そんな事より、なんかおかしいな…。
なんど踏んでも蹴っても茎がおれるでもなく、花びらが落ちる訳でもなくて、ただただ冷たさが増していくだけだった。
人と違っていたのは君の方。
彼が踏みつぶしていたのは私達にとって大切な小さな命でした。