忍跡LovestoryA
□ジェラシーで眠らせて
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最近忍足の様子がおかしい。
部室や生徒会室や俺様の教室に四六時中きていただけでなく、忍足の家まで連れていかされては熱い一夜をせがまれていた。
そんな日々が続いていたのが文化祭と中間テストとでしばらく忍足に会わない日々が続いたせいか忍足と話すことすらなくなっていた。
俺様ともあろうが、何か物足りなく忍足専用の携帯をいじっては知らず知らずため息をついていた。
パタンパタンと二つ折りの携帯を開けたり閉めたりと繰り返しては忍足からの着信はないかと思ったり、以前貰ったメールに目を通してみたりしていた。
−−−どうしたのだろう?
自分自身ですら戸惑いを覚えていた跡部はなすすべもなく夜を迎える日々だった。
数日後………
漸く部活が再開されるから跡部は内心喜びと逸る気持ちが隠せなかった。
「跡部〜♪なんか今日はご機嫌だね〜!なんか良いことあったのぉ〜♪羨まC〜♪」
慈郎が目敏く言い寄ってきた。流石、伊達に俺様の親衛隊を率いるだけある。
「マジで〜?なら朝練メニューも軽いやつだよね?」とニコニコしながら岳人がそれに賛同するかのように言ってきた。
「はっ!激ださだぜっ!何があったかしらねぇがそのしまりのない面は忍足そっくりだせ?」
「あーん?誰が忍足だって?俺様は俺様以外ありぇねぇ!」と潔く跳ね退けたものの。一際声のトーンが高めになってしまった跡部は更にほんのり頬を朱くしてしまった。
それを見られたくなくて慌てて「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!俺様より後に歩く奴はグランド100周だっ!」
「「えーっ?有り得ない〜!」」と慌ててみな部室からラケットを片手に走り去っていた。
(はあ。俺様の顔が、何だって?俺様はキングだ。いちいちあいつらの言うことに真に受けていたら体がもたねぇ!俺様としたことがとんだ失態だ。)
跡部はフゥーとひとつため息を零した。
最近ヤケにため息をつくなと思いつつロッカーを開けると、そこには見慣れぬものがチョコンとあった。
いやよく見れば。
忍足に似ているドールがあったのだ。そして、
『忙しい景ちゃんへ。これからはこれを俺の分身と思うて抱いて寝てや。侑士』
とメッセージカードが挟まっていた。
(あん?分身だと?ふざけるな馬鹿っ!)
ぷいと跡部はそっぽを向き、グランドへ向かったのだった。
その日一日中跡部はふて腐れていた。
―――――――
「侑ちゃん〜跡部がご機嫌斜めだC〜!何かしたでしょ?こっちにとばっちりくるんだから〜どうにかしてよ〜!」
「そうだよ!部室掃除までさせられたんだからっ!いつも一年生がやってるヤツをだよ?レギュラーメンバー全員でだよ?聞いた事も無いっ!絶対侑士のせいだよ?」
「ほんま堪忍!せやかて景ちゃんが忙しいんがいかんのや!」
「それ関係ないC〜!」
「侑士、包容力ないんじゃ?」
「はっ!激ださだぜ!」
「みんな何や、よってたかって。俺そないワルモンちゃうで?」
「「ワルモン〜!!!」」
「だって侑ちゃん掃除してないC〜!朝練だってサボったC〜!」
「慈郎だって出たっていうのにな!」
「すぐに準レギュに追い抜かされるぜ?」
「そこは氷帝の天才やから平気やで?」
「あ〜侑士のバカバカ!テストも良ければ、テニスも天才ってムカつくっ!!」
「がっくん堪忍な?ほなみんなの愚痴聞いたから姫さんとこ行くとしよるか?」
「「余計怒らせないでね〜」」
「まかしとき〜♪」
「かなりの自信だぜ。」
「羨まC〜♪」
「てか玉砕しないといいんだけどね。」
「侑士のことだからうまくやるだろっ?」
「だといいんだけど。今日の部活に響かなきゃいといいんだよね。」
「今朝のは特に酷かったからな」
キンコンカンコーン、キンコンカンコーンー、
「あチャイムだ。じゃあね〜」
−−−−−−−−
(さてと。あの姫さんの居そうなとこはと。ちゅうかなして景ちゃんは怒っとんのやろ?ちゃんと寂しくないようにお人形さんまで作ったのにな?おかしいんとちゃう?)
忍足は、めぼしい所を探してみたがさっぱりと見当たらなかった。
(部室、生徒会室、屋上、教室、音楽室・・・いないわ。困ったなあ?)
ふと大聖堂を思い出してみた。
ここは神聖なる場所で、一切のゴマカシ、嘘をついてはいけない場所として跡部が忍足に一度だけ連れて行った所なのだ。
綺麗なステンドグラスが太陽の光を反射させては、きらびやかに佇んでいた。
忍足はそっと重い扉をギーっと押して中に入っていった。
まるで蜃気楼のように暗がりに目が慣れない忍足は、それでもコツンコツンとゆっくり前に進んだ。
神前の所まできた忍足は、幻想的かつ厳格なる場所ではなすすべもなかった。
(どうか景ちゃんに逢わして下さい、景ちゃんのためやったらなんでもしたるし。尽くしたる。病めるときもすこやかな時かてや)
「せやから逢わしてや!今日は一年で一番大事な日やし………」
忍足は必死になっていた。いつもの余裕はどこへやら。
カツンカツンカツン………
その時・・・・・
勝手知ったる足音がなり響いて来た。
忍足は確信していたもののそっと影に隠れて、足音の正体を見ようとした。
「あん?どうやら先客がいるらしいな?根性悪いぜ?どうせ決まっているんだよな?あ〜ん?お・し・た・り」
「景ちゃんには、なにもかもお見通しっちゅう訳やね」
「ばかの単純には、尚更俺様のインサイトのが勝つんだよ。」
「ほなごもっとも」
「ならさっさと授業に出るんだな」
「そういう景ちゃんかてサボっとってええのん?」
「俺様は特別なんだよ。学長から呼ばれていたからな。今は暇つぶしだ。」
「それはそれは。学長さんも公認なんか………。それやったら俺かて特別やで?」
「お前のはさぼりってやつだろ?」
「ちゃうで?景吾の護衛やで?」
「はっ。都合のいい考えだな。」
「せやね。それよりあのお人形さん、気に入ってくれた?忙しい景ちゃんにはピッタリやと思うたんやけど?」
「あん?あんな陳腐な人形で俺様を満足させる事が出来ると思ってるのか?はっ!安直な野郎だぜ」
「へ?景ちゃんにはとっておきのお人形さんかと思うたんに。特に夜のお供にええのんちゃう?」
「っ!バカかっお前!」
「いややわ〜、遠慮せずにあちこち触ってええし?むしろ景ちゃんに触りたいし?」
「・・・・かよっ」
「ん?」