神夜姫組曲
□01 はじめの一歩
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金の片目は神夜の証―…
『ジンさーん!』
深い森の中、鈴を転がすような愛らしい少女の声が響く
長いみつあみを揺らしながら少女は、男・ジンのもとに降り立った
白い肌に、長い睫毛に縁取られた赤い瞳、片目は医療用の白い眼帯で隠されている
「おう、祈李。早かったな」
『今回は簡単だったから。火音は?』
「さっき仕事に行ったぞ」
『入れ違いになっちゃったのか…』
少女・祈李はどうしよっかな、と呟きながら何時も持っている熊のぬいぐるみをぎゅっと抱く
「どうかしたのか?」
『んー、もうすぐみんなの命日だから。後ね、相談したい事があったの』
「そういやそうだな」
祈李と火音は神夜族という種族の生き残りである
神夜族とは、その血肉を喰らえば不老不死になるという伝承の残る種族で、人里離れた土地に隠れ住んでいた
しかし10年前、隠れ里は発見されてしまい、祈李と火音以外の神夜族は捕まり、喰われた
まあ不老不死になど成れるはずもなく、喰った人間は発狂して死んだが…
二人が生き残ったのも偶然なら、ジンが隠れ里を見つけたのも全くの偶然
偶然が重なり、祈李と火音は今現在ジンのもとで生活している
「すぐに戻ってくるだろ。アイツだって忘れてないさ」
『そうだね』
「で、相談ってのは?」
『んと、火音が戻ってきたら言うね』
「わかった。そんじゃあ、祈李ちょっと手伝え」
『了解です、ジンさん』
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