神夜姫組曲
□02 一次試験開始
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祈李は今、試験会場へと向かうエレベーターに乗って、ステーキを食べている
試験会場への入り口が、何の変哲もない定食屋で合言葉は“ステーキ定食、弱火でじっくり”だなんてまるで冗談のようだ
《それにしても、よく食べますねー。太りますよー?》
『女の子にそれは失礼でしょ』
《事実ですー》
エレベーターの中には祈李以外に人はいない
祈李が会話しているのは人間ではなく、床のバスケットから顔を出している白いウサギ―白兎(ハクト)―である
白兎は祈李が念で創った存在で、喋るし自我のある念獣だ
どういう原理かわからないが、彼は絶で完全にオーラを断っても消えたりしない祈李の相棒である
『白兎、会場では喋らないでよ?』
《わかってますよー。僕は空気読みますってー。今までだって、そうだったでしょう》
『念のために言ったの。ご馳走様でした』
ステーキ定食を食べおわったので、食後の挨拶をして手を合わせる
どうやら時間的には丁度良かったようで、エレベーターが目的地に到着して、ドアが開いた
よし!、と気合いを入れフードを被り直し、白兎の入っているバスケットを持って祈李はエレベーターから降りる
余談だが、今の祈李の服装はセーラー服ではなくパーカーに短パンになっている
何故なら、そのまま行こうと思ったのだがジンと火音が猛反対したからである
まあそれは置いておいて、試験会場である薄暗い地下道はむさ苦しいくらい男性で溢れていた
何人いるのか数えるのは面倒だが、マメみたいな人に渡されたプレートには400と書かれているから祈李で400人なのだろう
この数が多いのか少ないのかは解らないが、普段人と接しない祈李にとっては気分が悪くなるくらいには多かった
『(人酔いしたかも…気持ち悪い…)』
手で口元を抑えて、関わりたくないから絶をする
それでもどんな人が受けるのかは興味があったので視線を上げ、受験生を観察してみるが念を修得している人はいないらしい
祈李にとって念は日常的に傍にあるものだが、どうやら一般的にはそうでも無いらしかった
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