聖者の行進
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微かな振動と、鋼鉄の壁を伝わって聞こえる音機関の音
ここはマルクト帝国が所有する陸艦・タルタロスの艦内である
一緒に連れられてきたルークとティアとは違う部屋に案内されて椅子に座る
前にはジェイドとイオンとアニス
扉にはマルクト兵
退路は断たれているが逃げるつもりはない
「それでラゼルは何をしにきたんですか?」
『ピオニーに頼まれたの』
はいコレ、とジェイドにピオニーから預かった親書と手紙を渡した
「何故貴女が親書を…」
『グランコクマに…てかピオニーに用があったから行ったら押し付けられた』
「ラゼル、グランコクマ行ったの?」
『うん』
「それではダアトには…」
『帰ってないよ☆』
だって帰りたくないしね
モースはウザイし、ヴァンはしつこいし
手紙に目を通していたジェイドが顔を上げ、その赤い瞳と目が合う
「わかりました。貴女はこれからどうするのです?」
『んー…イオン達がよければついて行こうかな〜って思ってるよ』
「どうするんですかぁ?イオン様」
「もちろんいいですよ」
『やった!ありがとイオン』
私との話も終わりジェイド達についてルークとティアがいる部屋に入る
ルークは椅子に偉そうに座りジェイドを睨みつけるようにしていたが、そのくらいでどうにかなるジェイドではない
「…第七音素の超振動は、キムラスカ・ランバルディア王国王都方面から発生。マルクト帝国領土タタル渓谷付近にて収束しました」
眼鏡の位置を直しながら唇に形だけの笑みを浮かべ、言った
「超振動の発生源があなた方なら不正に国境を越え侵入してきたことになりますね」
「へっ、ねちねちと嫌味な奴だな」
よくわかってるねルーク
ジェイドの嫌味は標準装備だからね
そう思っているとアニスは楽しげにジェイドを振り返った
「へへ〜イヤミだって♪大佐♪」
「傷つきましたねぇ♪」
『そんなこと思ってないでしょ』
「そんなことないですよ♪」
そんなことありますよ
そのくらいで傷つくほどやわじゃないだろ
「ま、それはさておき。ティアが神託の盾騎士団だということはイオン様から聞きました。ではルーク、貴方のファーストネームは?」
「―ルーク・フォン・ファブレ。お前らが誘拐に失敗した、ルーク様だよ」
やはりアッシュのレプリカだったか、とラゼルは納得した
髪の色こそ若干違うが顔はそっくりだ
ルークが言っている誘拐は本来ヴァンが起こしたものだが事実は隠蔽されているし、この場でそれを知っているのはラゼルのみ
「キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵のご子息…というわけですか」
「公爵…v素敵…v」
うっとりとした表情のアニスは両拳を口に当てて身を揉む
うん、アニスはそういうの大好きだからね
こんな反応も仕方ない
「だったら?」
ルークはジェイドを見てそう聞いた
「何故マルクト帝国へ?それに誘拐などと…穏やかではありませんね」
「何言ってんだ!お前らが―」
ティアが素早くかぶせるように誘拐のことはともかくと言い、ルークは渋々口を閉じた
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