聖者の行進

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「…死霊使いの名によって命じる。作戦名“骸狩り”発動せよ」


そんなジェイドの声が聞こえた途端、天井の全ての譜石から輝きが消えて辺りは闇に包まれた


「!?」

『おー、さすがジェイドだね。こんな時の為の奥の手かな』

「楽しんでないでよ」

『だって面白いじゃん』


少しだけ灯っている譜石が辺りを照らし薄闇の中に呆れたようなシンクの溜め息が聞こえた

さて、私もそろそろ行きますか


『私そろそろ行くね。後よろしく!』

「…わかったよ。ラゼル」

『ん?』

「無茶しないでよ」

『…了解♪』













♪♪♪













非常停止したタルタロスを進む

確か左舷昇降口に向かえばいいはずだと朧気な記憶を頼りに歩いて行くと視界に入る目立つ赤


『ルーク』


名を呼べば彼は振り向く

どうやら彼が最後尾だったようで彼の後ろからティアとジェイドが来た


「ラゼル様!ご無事だったのですね」

『うん。平気だよ』

「話は後です。行きますよ」

『了解』


ジェイドに促され歩き出すティアとルークに続いて(ミュウもいるよ)一番後ろを歩く

暫くすると左舷昇降口に着いたようだった


「どうやら間に合いました」


タルタロスの左舷昇降口の分厚い扉の前に立ち、小さな覗き窓から身を隠すようにして外を覗いたジェイドは囁くような声で言った


「戻ってきました。イオン様です」

「こちらの読みが当たりましたね」

「タルタロスが非常停止したこと、気づいてるか?」

『気づいてると思うよ』

「ええ。それよりこのタイミングでは詠唱が間に合いません。譜術は使えないものと考えてください」


譜術は使えない…か

詠唱を必要としないラゼルは使えるが面倒なので言う気はない

それよりもルークの言葉にラゼルは驚いた


「どっちにしろ封印術のせいでセコイ譜術しか使えないんだろ」

『え!?ジェイド封印術かかったの?』

「ええ」


封印術まで持ち出しているとはさすがに思わなかった


「ルーク、大佐は少しずつ封印術を解除しているのよ。そんな言い方、最低だわ」

「構いませんよ、事実ですから」


なぜか楽しげにジェイドは言った


「非常昇降口を開け」


その時、そんな女性の声が聞こえて階段を上がってくる足音がした


「…来ますよ?いいですか、ルーク」

「ラゼル様は私の後ろに」

『はーい』


ルークがミュウを持ち上げるのを見て、ラゼルはティアの後ろに隠れるように立った

しゅっと空気が抜けるような音がして扉が開くと同時に


「おらぁ!火出せぇ!」


ルークはミュウを敵の目の前に突き出した

ぼっ、と炎が噴出する音がして兵士は悲鳴…というか驚いた声を上げて派手に階段を転がり落ちた

…痛そう…

兵士が転がり始めたのと同時くらいに兵士といた女性・リグレットが腰の鞘から譜銃を抜きルークに向けたが、次の瞬間には後ろに跳んだ

リグレットが立っていた場所には槍が突き刺さる…がそれは囮

彼女が着地した瞬間まったく反対側からもう一本の槍がその喉元に突き付けられた


「さすがはジェイド・カーティス。譜術を封じても侮れないな」

「お褒めいただいて光栄ですね」


ジェイドは片手で槍を構えたまま眼鏡の位置を直す


「さあ、武器を棄てなさい」


リグレットは手を下ろすと手にした譜銃を地面に落とした


「ルーク、イオン様を」

「あ、ああ…」


ミュウをぶら下げたままルークは階段を駆け下りイオンの元へ行く


「ティア、譜歌を!」

「ティア…?」


左舷昇降口の暗がりからティアに続いて出ていくとティアは階段の途中で足を止めた

リグレットの目が驚きに開かれたがそれはどうもティアも同じなようだった


「ティア・グランツか…!」

「リグレット教官!?」


ほぼ同時に互いの名を呼び、その直後ティアはハッとして後ろを振り返ると階段の手摺を乗り越えて下に落ちた




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