聖者の行進
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神託の盾兵を前にしてルークは躊躇しているようだった
守られて育ったお坊ちゃんだから外に出て初めて人間と戦って、殺して…それがとても怖いのだろう
しかしルーク以外は慣れた様子でガイは既に腰を低く落として腰の片刃の剣の柄に手を添えているし、ティアもいつでも譜術の詠唱に入れるよう音素を高めにかかっていた
ラゼルもイオンを庇うように立ち神託の盾兵を見る
「ルーク、下がって!貴方じゃ人は斬れないでしょう!?」
「で、でも…」
戦えないなら下がればいいのに、と若干の苛立ちを覚えながらもイオンと共に戦況を見守る
戦えるけど皆が守るように戦ってくれるため手が出せない
その間にもジェイド、ティア、ガイは兵士達を絶命させていく、が…
「ルーク!行きましたよ!」
一人の兵士が奇声を上げながらルークに襲いかかっていく
ルークは初太刀をかわすと足をかけて兵士を転がした
「ルーク、とどめを!」
ジェイドがそう命じるがルークはまだ躊躇っているようで、声に押されるように剣を振りかぶったがそこで腕が止まってしまった
それが致命的な隙になると知ってか知らずか…
ルークに転がされた兵士が呻き声を上げて起き上がったのだ
「ルーク!」
ティアが咄嗟にナイフを投げるがそれは兵士の鎧に阻まれてしまう
ルークは動かない
いや、動けない
神託の盾兵が下からすくいあげるように剣を振るのと、ラゼルがルークと兵士の間に割り込んで突飛ばしたのは同時だった
『っ…!』
斬られた腕から血が花弁のように散る
『こ…の、茨の女王!アイヴィーラッシュ!!』
譜術が発動し、兵士の足元から茨が出現する
茨は蔦を伸ばしその鋭いトゲで神託の盾兵を串刺しにした
我ながら無茶したと思う
後悔はしてないからいいけどね
傷口を手で押さえてラゼルはふらりと地面に膝をついた
結構ざっくりいったみたいで痛い
本当に、ガチで痛い
「ラゼル様!今治します」
『うん。お願いね、ティア』
「あ…ラゼル…お、俺…」
『ルーク、ケガはない?』
「…」
何も言わずにこくこくと頷くルークはとても不安な迷子の子供のような表情をしていて、安心させるようにラゼルは微笑んだ
ティアの譜術によって腕は治ったからそんな顔しなくていいのに…
「取り敢えず、移動しましょうか」
「そうだな」
「ラゼル、歩けますか?」
『大丈夫だよ』
さすがに此処では休めない為移動することになり、ラゼルはイオンに手を引かれジェイドとガイの後ろをついて行った
「ルーク、行くわよ」
「あ、ああ…」
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