聖者の行進

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「まあ、なんですの、その態度は!わたくしがどんなに心配していたか!」


ファブレ公爵家の応接間
金髪の少女、キムラスカ王女ナタリアは腰に手を当て、濃い緑の瞳を吊り上げてルークを睨み付けた


「いや、まあ、ナタリア様。ルーク様は照れてるんですよ」

「ガイ!貴方も貴方ですわ!ルークを探しに行く前に、わたくしの所へ寄るようにと申し伝えてあったでしょう!?どうして黙って行ったのです!」


弁解するように言ったガイにナタリアは矛先を変え、ガイに向かって一歩前に出る

当然ガイは同じだけ後ろに下がる

うん、見ていて楽しい光景だ


「お、俺みたいな使用人が城に行けるわけないでしょう!」

「何故逃げるのです!」

「ご存知でしょう!」

「わたくしがルークと結婚したら、お前はわたくしの使用人になるのですよ!?少しは慣れなさい!」

「無理です!」


そんな漫才みたいなやり取りをした後で、ナタリアは大きなため息を吐くと、手を頬に当てて首を傾げた


「ほんとにおかしな人…。こんなに情けないのに、何故メイド達はガイがお気に入りなのかしら?」


ナタリアのルークと結婚、という言葉に反応したアニスはイオンの隣でわなわなと震えていた


「ル、ルーク様と結婚…!?」

「あ―これは失礼いたしました。お話はお父様から伺っております。わたくしは、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアと申します。お見知りおきを」


先程とは打って変わって優雅な所作でナタリアはお辞儀をした

やはりこういった所作は王族と言うに相応しく洗練されている


「そ、それであのぉ…結婚がどうとか、って…」


アニスがおずおずと訊ねると、ナタリアはルークと婚約している、と言った

まぁ貴族、それも王族の者なら不思議ではないが、アニスはかなりのショックを受けている


「ガキの頃の話だ!憶えてねーっての…」


そう言ったルークをナタリアが思いっきり睨んでいたが、小さく溜め息を吐くと、まあいいですわ、と言い話題を変えた


「…それよりもルーク。大変ですわね、ヴァン謡将は」


ここで“ヴァン”と言う単語に過剰反応を示したのは、勿論ルークである

ラゼルとイオンは何が大変なのだろうか、と首を傾げたが、正直ヴァンなどどうでもよかったりする


「!?せ、師匠がどうかしたのかよ」

「あら、お父様から聞いていらっしゃらないの?貴方の今回の出奔は、ヴァン謡将が仕組んだものだと疑われているの」


ティアは、あ、と呟く


「公爵はそれで私と共謀だと、さっき―」


公爵家に入ったときにファブレ公爵に言われた言葉をティアは思い出したようだった


「あなたは?」

「申し遅れました。ティア・グランツと申します、姫様」


ナタリアに問われ、ティアは改めて会釈し答えた


「グランツ?ああ、それでは貴女が今回の騒動の張本人の―」

「んなことより、師匠はどうなっちまうんだよ!」


苛立ちながらルークはナタリアの言葉を遮り叫んだ

それをさらに助長するようにジェイドが言う


「姫の話が本当なら、バチカルに到着次第捕らえられ、最悪処刑、ということもあり得るのではありませんか?」

「処刑!?」

「はぅあ!イオン様!ラゼル!総長が大変ですよ!」


アニスがのけぞりながら言う


『そうだね』

「至急ダアトから抗議しましょう」


言ったものの、二人共棒読みに近い

ラゼル的には、処刑でもしてくれれば後楽でいいな、と思っていたりする

しかしヴァンなら処刑される前に逃げるだろう

キムラスカ兵とヴァンならば、ヴァンの方が圧倒的に強いのだから



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