不協和音

□02.近づく足音
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『よし!おーわり!』

公園の片隅に鳩の死骸を埋め終え、聖は手を合わせた

燐も手伝ってくれると言ってくれたが、大丈夫だと断り一人で埋葬したのだが以外と重労働だったため手伝ってもらえばよかったと少し後悔していた

『さてと、燐のところに行きますか』



正十字学園町−南十字男子修道院が燐の家である

「お世話になりました神父様…」

修道院の外には小さな女の子とその子の両親であろう男女、そして燐の養父で神父でもある藤本獅郎がいた
「なんの…まぁ、あまり気に病まんことですな
…そうだ、これを」

獅郎が出したのは四つ葉のクローバーだった

「四つ葉のクローバーのお守りだ」
『持っているだけで魔除けになるんだよ』

ひょこりと顔をのぞかせ聖はお守りを女の子に手渡した

「…聖」
『いいじゃないですか、先生
私が渡したってダメじゃないでしょ?』

獅郎はその言い分にため息をつき、女の子に向き直った

「お前は父さんと母さんがいて幸せだぞ

本当に苦しい時は゛助けて゛って頼ればいいんだ

それでもダメな時はオレの出番だ」

安心させるように優しく頭を撫でた

「よく寝て、よく喰って、よく遊べよー」
『ばいばーい』
ひらひらと手を振り、二人は女の子と両親を見送った
「…大変だな、神父兼祓魔師も」
『燐』
 
「いもしない悪魔祓わされてさ、ただの悩み相談だろ?」

「バーカ、悪魔はいるんだよ」
俺達の心の中にな、と薄く笑って言う

『ぷっ…先生似合わない』
「うっせぇ」
『スミマセン…でも…』

余程可笑しかったのかクスクスと笑いを堪える聖に獅郎は拳骨をおみまいした

『ひど…それより燐、どしたの?その格好』

いつもと違いスーツを身に付けた燐に聞くと燐は獅郎を気にしながら答えた

「あー…
いや、やっぱその…面接行っとこーかと思って…
借りたんだ

似合ってねーけど少しはまともに見えんだろ?」

それを聞いた獅郎はフッと笑い、ネクタイはどうした?と聞いた

「あ〜え〜
あれ!クールビズ!
クールビズ?…ウォームビズ!?」

『ウォームビズじゃ暑いよ…
どーせ結び方知らないんでしょ?』

うっ…と言葉に詰まる燐をみて、図星ととった獅郎は燐からネクタイを受け取り結んであげていた

こういうのを見るといい家族だな、といつも思う

燐の大人発言に獅郎は大笑いし、それを見ていた聖もつられて笑った

「悔しかったら、少しは俺に成長のほどを見せてみろ!」

「ナメやがって…!
悩み相談と一緒にすんな!ボケッ」

売り言葉に買い言葉である
燐はビシッと獅郎を指差した

「言われなくたって見せてやるよ!!
目ェかっぽじってよくみてろクソジジィ!!!」

『燐、目はかっぽじれないから』
「いちいちうるせぇ!」
『ぶー』

獅郎と聖に背を向けて面接に向かう燐の横を小さな虫のような物が通り過ぎる

燐はそれを少しの間目で追い、すぐに歩き出した

『先生…!』
獅郎はすぐ傍まできた虫こと悪魔を片手で潰し燐と呟いた


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