不協和音

□15.聖女の意味
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これはまだ、私が燐達に会う前のこと…

▲▽▲

暗い教会の地下の一室
明かりはなく扉の隙間から僅かに漏れるランプの光が唯一の光源だ

部屋のなかはベッド以外の家具はない

簡素な部屋に似合わない豪華なドレスで着飾る幼い女児が一人、部屋の隅で膝を抱えていた

女児の名は白雪聖

この教会の娘である

彼女は特異な体質だった

祓魔師である彼女の両親はそんな彼女を研究対象として見ていた

サタンに対抗するための武器になるかもしれない、と

「聖、今日もおとなしくしていてね」

酷く優しく、甘い声で母がいう

台に寝かされた聖は何も言わない

これからされることも全てわかっていた

聖の体質の一つは身体が軽いということ

それは異常な身体能力の数値を叩きだすくらいだ

もう一つは奇跡の力

あらゆる傷を治すこともでき、悪魔を消し去ることもできる力

使い方を間違えれば災いにしかならない危険な力

その能力をより強固なものに、と毎日繰り返される実験

悪魔との契約もその内の一つでしかなかった

傷だって直ぐに治るから普通の人なら死んでしまうような怪我やショック死するような手術を何度も経験した

まだ年端もいかね子供が

泣くことも、叫ぶことも、逃げることも、もうやめた

誰も助けてはくれない

だから意味のないことはやめた

今日だって麻酔なしに身体を切り刻まれる

『…!』

痛い、イタイいたい

血がまた沢山出てる
笑う母が視界に映る

気を失って起きると部屋でたまに任務をしに外に出る

たくさん殺して、血を浴びて、心は悲鳴を上げている

いつからか騎士團本部に連れていかれて、そこでも研究と任務ばかりで

声は誰にも届かなくて

心は静かに死んでいく

藤本獅郎やメフィストに父と母は嬉しそうに自分達の最高傑作だと私を指差した

私はただ世界の終わりを願っていた


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