ダウト
□2.[行動開始]
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「ファウマ、いいかしら?」
控えめなノックのあと扉が開き、銀髪の女性が入ってきた
『いいよ、リフィル』
書類を置き、顔を上げる
「蘭士の治療の経過報告よ」
身体には、切り傷や打撲、火傷など大小無数の傷が至るところにあった
それは治癒術で完璧に治ったが意識はいまだ戻らない
「一先ず峠は越えたわ、後はあの子次第よ」
一週間足らずでここまできたのは治癒術を使える人達が総出で当たったらだ
顔には出していないが相当疲れているだろう
「蘭士が目を覚ますまでヒーラーを交代でつけるわね」
『わかった。ありがとう、お疲れ様』
「ふふ、あなたもちゃんと休みなさいね?」
蘭士の事件やいろいろと調べたり、指示を出したり、残っていた仕事を片付けたりしていたため、ろくに休んでいなかった
リフィルにはお見通しだったようだ
休もうと思っても休めなかったからこうなっている
今だって調べ物は終わり後は調査に行かせたメンバーの報告を待つだけ
いつもなら仮眠をとったりしているが今はそんな気にはなれない
『はぁ、ダメだな…』
何かしていないと余計な事ばかり考えてしまう
最悪の結果は避けられたにしろこのまま目覚めなかったらどうしよう、とか意味のない事ばかり頭をめぐる
少し気分転換が必要だと判断し、ファウマは執務室を出た
ファウマのいるこの本部と呼ばれる場所はギルドメンバーの住む移住区画、研究区画、医療棟、ファウマの執務室のある情報管理棟などがある
バンエルティア号を収容できるドックももちろんある
この小さな島ひとつが本部と呼ばれる場所である
ギルドメンバーも王族から一般人、聖職者や国の重役などいろいろと規格外のギルドだったりする
今回の蘭士の件で大体のメンバーは帰ってきたりしている
「あ…ファウマ…」
「はうあ!ファウマ〜」
物凄く勢いよく突進してくるツインテールの少女
どーんとぶつかり抱きしめられる
転ぶかと思った…
しかも結構痛いし
突進してきた少女アニスはそんな事お構い無しだ
後ろでアリエッタがおろおろしているのがもう可愛い!
『アニス、アリエッタお帰り』
「ただいまです…」
「たっだいま〜!ねぇねぇ蘭士大丈夫なの?」
『うん、大丈夫みたい。後は意識が戻るの待つだけだよ』
相当心配していたのだろう二人は一先ず安心したようだ
「それにしてもさ〜蘭士いじめるなんてバカだよね」
「許さない…です」
当たり前だ
許す気なんて更々ない
それは二人も同じらしい
『そう言えば、二人は今帰ってきたところ?』
「そうだよ!根暗ッタと任務だったからさ〜報告もらって急いで終わらせたんだ〜」
「アリエッタ、根暗じゃないもん。アニスのいじわる!」
いつも通りの二人のやり取りに自然と頬がゆるむ
『アンジュに報告は?』
言い合いを始める二人に言うと「やばっ行くよ!アリエッタ」と走って行ってしまった
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